「そのお札ってどういう意味なの？」
キョンシーの衣装を見て坊っちゃんが尋ねる。
「これは。天子の命令により、蘇り従えという意味ですね。天子はこの場合、おそらく生き返らせた術者、道士を指します」
「って、ことは僕？」
「そうなりますね」
「…でも従うなら従者とあんまり変わらない？」
「キョンシーの従者なんてやめた方がいいですよ。噛まれたらキョンシーになってしまいますよ」
「えっ、そうなの！？」
「…というこわい話も後付けでされることもあるようですよ。札があえば道士の思うとおりに動くとか」
「ほんと？じゃあグノウ、お菓子もらってきて！」
「…坊っちゃん。私はキョンシーの服装をしているだけでキョンシーではありません」
「…むぅ」
「キョンシーに頼らず道士様自ら頑張ってくださいね」
「いいよーだ！いっぱいもらってくるからっ」

ただ黙ってついてゆく。

ポツリと独り言を落とす。
どこかその様子には、余裕が無いように感じられるかもしれない。

ヴァルはクライの後ろに隠れた！

何度も言わなくとも大丈夫と言われるとそれ以上は何も言わないだろう。

グノウが言うように片手には梨を持ち、もう片手にはピーラーを手を添えてもらいながら持つ。
そして一度、グノウと一緒に皮を剥いて感覚を忘れないようにして頷く。

そう言って今度は一人で剥こうとする。
1D10 = 4 ( 4 ) 　ダイス判定6以上でちゃんと剥ける、それ以下は失敗して指まで巻き込もうとする。

そんなことを言いつつも、くすくすと笑うその様子は、見た目の若さを感じさせないだろう。


意味ありげに笑うその様子に、若干挙動不審になりつつ…。

髪の毛をつまむ様子をぼーっと見つめている。
自分もなんとなく前髪をつまんだりしつつ。

　　　　　　　しぶとく聞いてもイタチごっこだろう。
　　　　　　　ならば今は話題を変えておくのが得策か。

ぷうっと気合いを入れたようだった。

すごく　もさっと　なった！

それからまた少し考えて。

無言で銀銃を両の手に。
その表情は、何時に無く厳しい。