辺りは光で満ちあふれていた。

青く澄み渡った空、花々が咲く草原、遠くに見える森や小川——

その全てが輝いている、光の記憶。


ふと、私は傍らに何かの存在を感じた。
そちらに振り返るとそこには横たわる少年とその傍らに座る少女の姿があった。

少女はこちらに気付き、笑顔を見せる。
それは初めて会う人への顔ではなく、長年の友人の様な親しい表情。


「こんにちは、やっと会えたね」


少年の名前はレスティア＝ノール。
少女の名前はリィシア＝ノール。

この情景は私達の元となった彼の最後の記憶であり、私達の根源である。


「ええ、長い間待たせてしまいました」


私は彼女にそう受け答える。
私は彼女のことを誰よりも知っており、彼女も私のことを誰よりも知っている。
いいえ、正しくは……


「うん……でももう少し待たないといけないかな？」

「ええ、もう少し落ち着くのを待ちましょう。今だと周りの方に迷惑をかけてしまいます」

「しょうがないね。それじゃあ少し待とっか？」


そう言って彼女はどこからかティーセットを取り出し、お茶会の準備を始める。

そうね……変化は少し先送り、今はこれから起きる彼らの戦いを見守ることにしましょう。




・〜・〜・〜・〜




激しかった気配はいつの間にか収まり、辺りには再び静寂が広がっていた。

僕は辺りに注意しながら大礼拝堂を進む。

先程の戦いでどちらが勝ったのかは分からない。
何となく分かる事は片方は去り、片方は先に進んだ、という事だ。
まだまだ油断してはならない。

ふと通りの先に気配を感じ、僕は足を止める。
この気配は確か……

思案している僕をよそに、ふわもこ達は気配がする方に走っていく。
まるでそこにいるのが誰か分かっていて、そして安全だと判断しているようだ。

僕は慌ててふわもこ達の後を追う。
少し慌ててはいるものの、僕もこの気配の主が安全である事は確認している。

そう、何度か共闘をしているあの人だ。