記憶を失った少女、フラン・ベルジュと出遭ってから一週間。
彼女について何か手がかりになるもの、見憶えのある建物や人はないかと街中を歩き回った。

だが当人は、何を見せてもどこへ行っても首を横に振るばかり。

探偵に頼んだり、精神科の病院へ行って記憶喪失の原因を探ることなども考えたが、
ベルは他の人間と接することを極端に嫌がった。だから今は、自分が何とかするしかない。



何かできることはないか。できることは・・・



悩んだ末に、ある一つの考えが頭に浮かんだ。

サキュバスは、他人の夢の中に侵入することができる。夢というのは本人の記憶の断片から
形成されることが多く、そこから何か手がかりが掴めないだろうかと思った。

自分の思いはエゴかもしれない。この子にとって負担になるかもしれない。

でも、それでも・・・・



その夜、私はベルの夢の中へ、その奥深くへと入っていった。

ナズナは　かんがえている！

あいてを　しんちょうに　みている

無言で武器を構えた。