手だ。
巨大な、手だ。
雲間から巨大な手が１本、にょっきり突き出している。
その巨大な手は、同じく巨大な剣を握りしめ、天高く掲げている。

・・・ふいに、景色が歪んだ。
掲げられた剣は、いつの間にか上下を反転し。
その鋭い剣先は、今や私に狙いを定め、鈍い光を放っている。
そして、そのまま。
私の頭上に、恐ろしい勢いで落下してきた。

テーブルの上からかん高い声がする。
目をやると、白い消しゴムの上に寝そべった悪魔が、気だるそうにこちらを見ていた。

憤慨した様子で消しゴムから飛び降り、長々と名乗るミルキー。
悪いけどこんな長い名前、とても覚える気にはならない。
その彼のすぐそばに、タロットカードが一枚、開かれている。

　 Ace　　of　　Swords.
「剣のエース」

前回の探検の時。このまま兵舎を進んでいいのかと思い、引いたカードだ。
逆位置のそれは、剣先を私に向け、静かに佇んでいる。

消しゴムによじ登ろうしていたミルキーをつまみ上げ、携帯型薬箱の中に落とし込んだ。
このままポケットに入れておき、戦いの前に取りだして飲むのだ。
さながら、戦闘力の上がる危険なドラッグのように。

この無礼者とか出せとか聞こえる声を無視して、パジャマを脱ぎゆっくり服を着替える。
カーテンの隙間から、朝日の強い光が差し込んでいる。
今日は忙しい一日に、なりそうだ。

タロットしてる様子みて、そんなこと言ってました。