「龍貴、退け！」

「——ってー、かっこよくいったみなみに死亡フラグをあげるですの。」

「……いらぬ。」

というか、なんだろうこの状況は。と言いたげな顔をしている。
今、忍は女を組み敷いてる——まぁ俺だが。


　　　——　少し前　——

「面倒くせぇな。」

龍貴がはぐれた状況で、探すのを渋っていると忍から射抜くような視線を賜った。
いや、そんな強いもんじゃないが暗に口で言わないだけで呆れてるんだろう。

水辺で足跡がわからないわけではないが…　川の中を進まれると困る。
慎重に周囲を探っている様子が真面目すぎて正直面倒臭い。
そんな気持ちだったんだが——

「茶々が憑いてたろ。連絡待ってもいいじゃねぇか。」

「…戻ってくる保障もござらん。」

姦しい妖精の、意味不明な言動に辟易してるといったところだろうか。
正直なところ慣れろとは言ったが無理難題だったかもしれない。
とはいえ、あいつが戻ってこない可能性も多少はあるが、まぁあいつはくるだろ。
今の龍貴と一緒だと退屈そう——

「あー！！　みなみなにしてますの！？」

ほらきた。

忍のほうも顔を上げて、ひらひら飛んでいる彼女のほうを見る。

「…たつき」

「茶々をさしおいてせんさまとでーとはなはだしいですの！はやいですの！」

「（そんな状況だっただろうか）」

「みなみしらないですの！？　ひとのこいじをじゃますると鳥キックですの！！」

「それを言うなら馬でござ……」

　　どかっ！！

と、どこからともなく現れたフラミンゴのキックされた結果……

　　　——————


男の真顔が目の前にあるわけなんだが。
顔色ひとつ変えねぇな、こいつ。あ、義眼だコレ。

「…すまぬ。」

と一言謝ってからすぐさま退いた。

つか、

「茶々。」

「はいですの！」

「つめてぇ。」

「ぬぐですの！」

脱がねぇよ。つか狙いはこれか、しょうもねぇ。

「んで、こいつらなんだ。」

茶々が来た方向——先ほど巳南を蹴っ飛ばしたフラミンゴ“たち”が立っていた。
よく見たらさっき遭った蛇野郎もいるじゃねぇか。

「あ、たつきのとこからもってきたですの。」

あのあと茶々、追い回されてうきうきでしたのー。とくねくねしてるが無視して、

「だそうだが、どうする？」

「…無論、」

蹴散らす、それができなければ隙をついて突破・離脱するというところか。
まぁそれがこいつの生き方なんだろうな。その用途は中々面倒臭ぇ。

（数歩、無造作にも見える何気なさで前へ詰める。
そのまま振り返る事無く、背後へと声をかける）

どきどきって何？！いつも茶々さんの出すものは難題が多くてわからないよ…！？

出直して来いの言葉に、素直に従う。
だから、なんで苦そうなお茶にわざわざ手を出しちゃうの？！大楠様のって言ったよね！？

茶々さんおかしいよ、おかしいですよ！こんなの絶対おかしいよ！カテジナさん！

（カツヱの『説明』に耳を傾けながら、目で指先の木片を追う。
言葉と共に放られたそれがぱたりと地に落ちたあと、ふ、と微かな声が漏れ）

（さりげなく色々付け足した）

（どこか逡巡する様に、僅かばかりの間が空く。
そして続く正直な言葉を、相手を真っ直ぐ見たままあえて口に出した）