待つ人を守るために、己を鍛える—




巨大な城の前に立ち塞ぐように、一人の男がそこにいた。

朱色の瞳に朱色の短髪、白髪交じり。
素肌にオーバーオール一丁で、高枝切りバサミを身に着けている。

名を名乗った後に、庭ガールが応戦で駆けつけた。
簡単にこの場を通してはもらえないようだ。
強さを口だけでなく、実力で示せ。力強い眼に心が揺るがされたのを感じた。

”クズども”と罵倒された後、その示す力は”無駄なもの”だと男は自身の力を誇り、言い放った。




—　”無駄”……？


—　私が……、私たちが……今、ここで…戦うことは…、”無駄なこと”……？




男の威圧に龍貴は気を負う。
男には、強い意志がある。意地でも立ち塞ぐ強い理由がある。


男は龍貴に向かって全速力で突進した。
腹部が張り裂けて破れるような、抉れるような、強い衝撃を受けた。
身体が宙に浮き、庭園の茂みへと投げ飛ばされた。

—　うまく……呼吸をすることが…できない……、………視界が……霞む……。




男の追い打ちを止める為に、黒く、大きな背中が目の前にあった。
その背中はいつも目にしている。その背中は庇ってくれている、ちっぽけで、非力な私を。

これでは、庇う事だけに、手を回してしまう。…それは、いけない。でも………



くるしくて……くやしくても……、身体が………動かない…………。



身体はうつ伏せのまま、霞んだ視界で目の前の光景を見ていた。
涙を両目に溜め、静かに零れ落ちる。腹部の激痛を押える手が、とても虚しい。


遠くで、黒い影が崩れ落ちる。
ひとつ、ふたつ。見慣れた黒いシルエット。

—　望みとは…、………私は……私は……ただ………。




進攻に失敗した・・・・・
精神にも肉体にも、重い痛みが悲痛であり苦痛のまま。零しても、零しても涙が溢れ出た。

俯いたまま、意気阻喪。必要以上に思い詰めている。

少女に一歩、ひかれた。

予想外の行動をとられ、五木は　混乱した！

どう考えても勘違いであるが五木は無駄に頑張ろうと思った。

ぼそりと、少女へ向かて声を発する。
相手へ届いているかが怪しい程の小さな声。
昔見た青い衣をまといし少女の話を思い出し、彼女の言葉をまねてみる。

あなたの名前を聞いた二人は、物珍しげに目の前の小さな身を見下ろした。
きっとあなたはじっと見られて、居心地の悪い思いをしたことだろう。
そんな様子に気付いてか否か、ブラックと名乗った方の男が
さらりとさりげなく逸れかけた話題を元に戻した。

そう言って確認と同意を求める。
——食事の誘いを断るのなら、おそらく今が最後のチャンスだろう。

（指導を請われ、間合いの取り方や基本的な刀の扱い方を教えてるうち、
半時を少し過ぎただろうか。頃合か、と思い、指導の手を止め声をかける）

（木の下に座り、二人で水を摂る。さらりとした風が渡る中、忍が口を開いた）

（軽く握った拳。手の甲を、とつ、と静かに龍貴の胸にあてる）

せんさまー　みなみー　みてみてー　かめらあっぷですのー　ぶいっ！
めいんひろいん　いただき　ですの　　茶々！　おんすてーじ！