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　※ジャック (ENo.1597) の日記の後半部分になります
　[ http://ikki.x0.com/r/k/k1597.html#DIARY ]

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「話はこうだ」


相変わらず渋い顔をするにブラックに、
ジャックは事のあらましを 身振り手振りを交えて大仰に語り始めた。


「今週末、ここから少し離れたナントカって街の貴族の館で宴会が開かれるらしい。
こないだの白豚野郎よりもっと位の高ェ奴の屋敷だ」

「ナントカの部分が肝心なのに、何でそこを覚えてないんだ？」

「うっせ！後で調べりゃ判るからいーんだっつの！！茶々入れねぇで最後まで訊け！
えーっと……どこまで話したっけな」


いちいち揚げ足を取るブラックにイライラとしながらも、
ジャックは先程まで探りを入れていた情報についての記憶を辿る。


「ぁー、そうだ。そこでな、『なんちゃって博打ごっこ』をやるんだとよ」

「…何だそれ？」

「あー…なんつーか……こう、上手く説明できねえんだが…
何でもお偉方をオモテナシするのに会場をカジノ風にセッティングして、
ぬっるいギャンブルパーティーをやるらしい」

「ふぅん…？言うなれば接待賭博って感じか」

「おお！そうそう、大体そんな感じだ！流石ブラックだな！」


相棒の察しの良さに手を打って満足げに頷くと、
「さらにだな」と得意げな表情を浮かべ、更に身を乗り出して言葉を続ける。


「そのパーティーで大量に用意されたプライズが例のアレでよ。…なあ、お前何だか想像つくか？」

「さあ？」



「へへっ、聞いて驚くなよ。……──《ネクター》だ」





…また、《ネクター》か。 気のせいか最近よく聞く言葉だ。
ニッと笑うジャックとは裏腹に、ブラックは何かしらを考え込むように口元に手を当てる。


「…なるほど？ つまり、ゲーム感覚で遊びつつ、そいつを横流しするのが目的なのか」

「そーいうコト！」

「ふぅん……粗方読めてきた気がするな」


再び椅子に座り直しながら、ブラックは言葉を続けた。


「この間の一件といい、連中はどうも《ネクター》にご執心だ。
理由は定かじゃないが……おそらく、独占を目論む奴がいるんじゃないか？
それも絡んでいる人間を見る限り、かなりの有力者のように思える」

「出てくるツラもまー、揃いも揃って馬鹿みてぇに貴族やら何やらの金持ち連中ばっかだしな」

「うん…だから今、下っ端の連中がであの手この手でネクターをかき集めてる。
下っ端ってのはつまり、この間のカジノのオーナーみたいなやつだ。まあ、彼も十分大物だとは思うけど…
彼のように買い占めのための資金を不正に捻出しようとする輩もいれば、
《ネクター》そのものを力づくで奪い取ってるようなやつもいるかもしれない」

「ま、方法は色々なんだろうよ。暴力的だろうがなんだろうがお構いなしって感じだろうな」

「…そうして集めたネクターを献上すれば、めでたく『覚えもよろしく』なって、
上からの『お引き立て』があるって寸法なんだろう。
…まったく、醜くて見てられないな。権力に涎を垂らす畜生って奴はさ」


ふん、と鼻白むブラックに、ジャックはにやりと笑ってみせる。


「まあ、俺ァややこしいことを考えるのは得意じゃねぇけどよ。悪人の面ァ一発ぶん殴ってコーセーさせんのも
ゼンリョーーーーな一般市民のギムってやつだと思わねえか。なあ、相棒」

「ま、そうだな。それでちょっとばかしやりすぎても、それは仕方ないってものさ」

「ハッハァ！よーしきた！！それでこそ俺の相棒だ」


そう言って両の拳を打ち鳴らすと、その片方を前に突き出す。


「いつものやつ、やろーぜ！景気付けだ」


いつものやつ、それは毎度の気分が『アガる』まじないだ。
互いの拳を上下に打ち付け、そのまま腕を交差させ、そうして相手の口元に…──
が、


「……あ、悪ィ。肝心なこと言い忘れてたわ」


という一言により、流れるようなその動きはぴたりと中断してしまう。


「…何だよ」

「ぁー……あのよお、今回の宴会なんだけどよォ……」


そこまで言って珍しく……実に珍しく、ジャックは言葉尻を濁す。


「どうした？早く言えって」

「あのな……」


そうして彼が口にしたのは、とんでもない事実だった。





「一般人で会場に入れるのは女だけらしーんだよな……セッタイだからよ」





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——そうして冒頭のやり取りへと戻り　　そして……？



＜次回へ続く！＞

チセは周囲におおい繁る木々を見上げて呟いた。

彼らの中でその場所を訪れたことがあった者はいただろうか。

得意げに顔を上げると腕を回したり跳んだりしてみせるが、その顔にはやはり冷や汗が滲んでいるようだ

そのあとに続く助言とも忠告ともとれる男の言葉に、アールは難しい顔をしながらも聞き入る
ブラックを見上げると、濁りのない眼差しを向けた

「もし、もし。」

呼びかけに応じるように青年が瞳を開けると、ぼんやりと映るは少女の姿。

そう、そこにいたのは数々の災難を巻き起こした彼の少女。意識が戻り、起き上がった青年は果たしてどのような反応を示しただろうか。少女はかまわず口を開いた。

言いづらそうに視線を落とす少女が言わんとすることは、察しのいい青年ならばわかっただろうか。穏便に話し合い、持っていかれた服を取り戻さんとする青年たちを、こともあろうかPKと勘違いして応戦してしまったというのだ。

興奮した様子でキラーインコにむかって口笛を吹いている

チセは不満そうだ。

少女はソワソワしている。

少女は双方で交わされるやり取りを見守っている。

目の前に十字路がある。
そこには珍しく大勢の人が集っているようだ。

その中央には一冊の……日記帳だ。日記帳が落ちている。

拾って中を読んでみるか。
いや、そんなことより正面、右、左……どこへ進むか決めるべきだろうか。

貴方は立ち止まって本を読んでもいいし、そのまま進路を決めてもいい。