研究者本人の居ない研究はやっぱり捗らないもので、
エンブリオについてはまだまだ謎が残されている。
一揆の方は、いつ決着がついてもおかしくない状況だけれど、
今のこの状況がいつまで続くかは解らない。
王が居ると思われている城の中には、
大勢の一揆参加者が入り込んでから暫くが経つ。

…都市への報告書の他に、家や…兄さんやクロ達にも連絡したい。
アーシェにも言われたし。
そうだ、ハナだったら可愛い服のデザインとか、思いつくかも。

と苦笑しつつ

どん。と鍋を差し出して、

首を傾げながら、コオロギを掬って、ぱくりと口に放り込んで見せた。
ちゃんと食べれるよ、と示すように笑って首を傾げて。

これは前の話に関係なく、単純な興味の質問のようだ。
少しミルザの顔を覗き込んだ。

ようやく上げた顔で悲しそうに笑う……。

少し強く抱きしめた手がそのしびれに嘘をついていないのならCVの体躯は年相応のごく普通の少女のように感じる……。

ほくほくしたした表情で。

ちょっと面白そうに笑ってそう言いミルザの肩を軽く叩くと、先程よりは距離を空けずに木のそばに立つ。

今度は先程よりは勢いを付けずに、同じように木を数歩蹴って駆け上がる。
最後は上の枝を掴んでぶら下がった。

そう言い、枝から手を放して地面に降りる。

続かなかった言葉に一瞬だけ片眉を上げたが、そのまま変わらない表情で言葉をつづける。