さまざまの世界がありさまざまの革命があった。それらは王を……あるいは皇帝を、大隊長を、管理官を、大兄を、神を、父を、その世界ごとのさまざまな名で呼び習わされる支配者たちを排除しようと運動した。革命をなす最後の一刺しは世界内の住民によってなさせるのが通例であり、永久戦線の流儀だった。私たちは革命を輸出し、革命を助けはするが、その後の世界の運営にまでは関与しない。革命の根本的で劇的な一幕にも深く関わらない。革命はその世界のものであり、私たちのものではないからだ。私たちはただその世界に燻ってあった怒りを、叛旗を、嘆きを、介添えし、掻き立て、支えるだけ。それが革命者の流儀だった。どれだけ王への強い叛逆の心が、私たち革命者のなかに嵐のように吹き荒れているのだとしても。

私は今、天蓋庭園にあり、パラダイスの喉笛の間近にある。ルリアンナはいない。ラルフも。大量に溢れかえる人の匂いの、一体誰がこの革命の当事者であるのかも知れない。この革命は敢えて名指すならむしろ侵掠に似ている。大量の異世界者を手引きし、その後の混乱に目をつむる、世界内の少数派によって招き寄せられた侵掠。ただ騒擾で世界のあり方を、変えようとするよりもむしろ破壊しようとする、だからこの革命には未来がない。過去しかない。王によるネクターの占有が起ころうとした、という過去、それに叛逆した、という過去。誰がパラダイスの次に訪れるメルンテーゼのあり方を議論できるのか。その王冠をパラダイス亡きあとにどう変えるつもりなのか。明らかに国軍という単位で攻め込んでいるベルクレアが例えば新たな王冠を戴こうとするなら、そのとき人はどうするのか……。

いや。その筋書きであれば先は知れている。ベルクレアが王冠を奪おうとするなら、革命の群れは嬉々としてそれと戦うだろう。まだ戦うことができる、という喜びとともに。この世界を覆っている気配はどの革命にもつきまとう「早く終わってくれ」というあの諦めにも似た疲弊とともに、拭い難く、必ず、「まだ終わってくれるな」という炎がある。奇妙なほど数多くある。それはこの革命の目的が、定義が、畢竟、ほとんど誰にも共有されていないがためだ。少なくない人数が、革命よりも、自分たちのエンブリオを錬磨し、さらなる力を手に入れ、より強い敵を斃すことへ興味を移している。いや、はじめからそれが目的の連中だって少なからずいたのかも知れない。そうしてそういう連中こそが、往々にして頭ひとつ抜けて強い。この革命はあまりにもいびつだ。

人は戦い続け奪い続けることを望んでいる。それでも構わないと思っている部分は私にもある。永遠に終わらないのならそれで構わないと。だが、その永遠と、私の引き受ける永遠は、違う、とも、叫ぶ私がいる。私は戦いを引き受ける。それでも、戦いの中へメルンテーゼを見捨てるつもりはない。私たち革命者は革命を求める叫びに同調する。たとえ誤聴であろうと、それを呼びかけととらえ、引き受けて、ひとつの争いへ、出頭する。だから私の本懐は革命だ。今も変わらずに。誰も未来を示せないのなら、或いは、私が。それをさえ否みはしない。

グラスを握る指先に、わずか力が入る。

はたと顔を上げ、オルガの震える眼球を、それを縁取る睫毛をじっと見つめる。
何かを確かめて見ようとするように目を細め、怪訝な眼差しで。