全身痛いわぁ、と、老婆染みた台詞が頭の中に浮かび上がる。
久方ぶりに往時の力を出してみれば、これだ。何ともし難いものだ。

これは、主に魔術の媒体などに使われるマナ、神性呪文や奇蹟などに代表される高次存在からの力の授与など、素となる何かを操作するような、有り触れたものではない。
様々なものに内在するエネルギーを、増幅させる手段、と表現するのが一番近いのだろう。

私個人の扱える量としては、そう浪費する事は出来無いのだ。
・・・それを無視すれば、こうもなる。
幾ら強敵を打ち倒してそれに転用できる力を奪い取ったとは言え、限度と言うものがある。


昔は良かった、なんて言葉は使いたく無いが、その差は歴然だ。
街一つ吹き飛ばす力程度は、有っただろうか。
だが、その力を私に齎した元凶、兼相棒は現在もまだ休眠中だ。
・・・まだまだ、私の維持管理に力を回すつもりなのだろう。いい気な物だ。
こちらの状況も知らないで——と、本当に知らないのかは、分からないのだが。


しかし、それでも。
先には進んでいる。エンブリオと名付けられたこの土地の力持つ者らは、こちらと親和性が有る。
いつか、いつの日か。相棒を目覚めさせる事が出来るのではないか。
私はそう、数十年ぶりに期待しているのだ。
　

ゆっくりとしっかり約束の言葉を紡ぐ。

アーシェの言葉に頬を掻いて見せ

思いも寄らぬ言葉だったのか、暫し黙考して。

言った矢先に、普段と変わらぬ言い様に気づいて、むーと軽く唸ったりしている

王について今一度、どのような人物像か考えてみるも、よく分からないという見地に至り、ぐぬぬとしている。

先ほどのやり取りで少々気恥ずかしくなったのか、少しばかり紅潮した様子で言葉を続けた

　
　　　　　　にやりと笑い、右腕に魔術力場を纏わせ、腕甲を形成した。

　
　　　　　　そして、右目を封じた布を取り払う。
　　　　　　黄金色の光を燈した瞳が、鋭く眼前の敵を、射抜く。