せっかくのいい景色なので、季節ハズレではあるけれど、みんなで花見をしようとおもいたつ。このところお金に余裕もあるので、ちょっと奮発して贅沢な食材をふんだんに使って料理をみんなで手分けして作ることにした。

「クレーさん、お魚たくさん釣れましたよ。どうしましょうか？」
「ありがと。そうね、この魚はお刺身にしましょうか。捌いてもらっていいかしら」
「はい、おまかせください」

アルーテは意外と釣りができるらしい。水辺育ちだからだろうか。

「いやあ、実に見事な見渡すばかりのネクターですなあ、セチアさん」
「まったくですな、ソラメロさん」
「ほら、そこ、さぼらない。ソラメロはこのバスケットいっぱいに果物をとってくる！セチアはテントからベーコンを持ってきてくれる？」
「はーい」「へいへい」

エンブリオみなそれぞれ料理の準備をしてくれているが、妖精たちはどうもサボりがちだ。いつものことではある。

「はい、クレー、とってきたよ。」

とってきて、と言ってからものの5分足らずでソラメロが戻ってきた。バスケットには桃がいっぱい盛られている。どうやら、事前に桃の木のあてはつけていたらしい。サボっても要領だけはいい。

「ありがとう。・・・そういえば、そんなに桃をいっぱいにして、重くないのかしら」
「んー？ このぐらいは平気だよ。ボクの力をみなおしてくれたかな？」
「ソラメロは体重いくつだっけ」
「えーと、・・・って、教えないよ！レディーの体重を聞くなんてシツレイしちゃうなっ！」

分不相応な単語が聞こえたが、気にせずソラメロを右手でつまみ、左手に持った桃とくらべてみる。およそ桃2個分ぐらいだろうか。バスケットには桃が大小16個。小さい体で細腕のわりに、けっこうな重さのものを持ち運べるらしい。

「ふーん。そういえば、アリは自分の体重の十数倍のものを運べるというから、妖精もそんなものかしらね」
「ふふふ、もしボクがクレーと同じぐらいの大きさだったら、クレーなんてひとひねりだよっ！」
「え？なんだって？」

左手にもった桃を一瞬で潰し、種まで粉々にする。桃ジュースのできあがりだ。

「や、やっぱり、クレーと腕相撲して、いい勝負はできるけどギリギリ負けるくらい・・・かな！」
「そうかもね」