…………。
圧倒的、ですね

手抜きする理由はないからね。
とはいえ、まだ肩慣らしの段階ではあるけれど

この地にあるネクター、それとエンブリオは…
僕が契約する魂と似たような性質を持っているとは聞いているものの。
それを最も使いこなせているのは誰なんだろうね？

そうですねぇ…。やはり王か、それに近しい者なのでしょうか。
とはいえ、黒騎士とやらはあの為体でしたけどね…

ほんとに。立場や身分が当てにならないことはあれで証明されたようなものだ。
実力主義でなければ生き残れないのは…どこの世界も同じだろうね

でしょうね。
とはいえ、ネクターの強制徴収を行った王については…それなりに期待しても良いのかもしれませんが？

物量でどこまでも強くなる性質があるならそうかもしれないけど。
流石にそこまではまだ分からない…か

……ミコト様も、力を欲しているのですか？

……どちらかと言えば、今の力でどこまで戦えるのか試したい。が正解かもしれないな

力が足りていないのならば、更なる力を付けるだけ。
…この辺りは、君もよく共感できるところなんじゃないか？

ええ、それはもう。
具体的な目標があれば尚更…ですかね

目標…か。
まぁ、空の器が生きる理由にはなるのか

…そういえば、気になっていたことがあるのですが

うん？

うまく表現できないのですが…ミコト様はどのような存在なので？
あくまで元はただの人間で、そこに2人の人格を埋め込まれただけなのか。
或いは俺…じゃない。私と同じように『身体そのものも独自に創られた者』なのか

……どちらとも言えないな。
元々あった人間の身体を色々と改造し、その上から更に彼等の人格を埋め込んだ…
というのが正確なところだろうか

なるほど…。一から作られたこちらとは別物、というわけですか

…シオンが球体を生成できなかったということは、僕でも無理なはず。
理由までは分からないが…君の魂や肉体はかなり独特だ。
僕の世界にはいなかったタイプ、という意味ではなかなかに興味深い

…普通に見えて、普通じゃないからこそ。死者の魂なんてものを扱えるんだろうけどね。
その身体を作った人物は、『そういうもの』への携わりがあったんじゃないか？

その可能性は…ないとは言えない、ですね。
…にしても、死者の魂と生者の魂ではそこまで違いがあるものなのです？

かなり違うね。
生者の魂はそれ自体が生きるために必要なエネルギーを持っている。
僕はそのエネルギーを活用して肉体を活性化させたり、一時的な強化をしたり…
或いは相手の思考を操作したりしてるのさ

だけど死者の魂ではそれができない。
できるのは…怨嗟や怨念の力を攻撃や防御手段に用いるぐらいだろうか。
まぁそっちは専門じゃないから、使い手によっては他にもできることがあるのかもしれないけれども

新たな活用法が見出せるかどうかは自分次第ということですか…。
それはそれで面白い話ですね…と

…少し話が遡りますが。
ネクターをかき集めていそうな人物…王以外にもう一人、心当たりがありました

…潜在能力の程度までは分からないが、多少の参考にはなりそうかな。
そういうことなら…攻撃を受けることに徹するのも悪くはない

フフッ…。
力と力のぶつかり合い。今回も楽しませていただきますよ

……あれの実力はどの程度だろうね？

トランプは武器になるわよ。刃仕込めばそれなりの威力には。
無論技量が必要だし、
普通の武器より効率は落ちるけどね。

癇癪玉は基本的に大きな音を立てるのがメインだけど、
火薬の量を調整すれば、閃光弾や爆弾にも応用が可能ね。

それにしてもほんとよねぇ。突き詰めれば突き詰めるほど言葉遊びになる。
それを極めたのが哲学らしいわ。

特に……
この世界はそういう内に大きな厄介事を抱えてる人が来る世界みたいだしね。
面白みのない人の方が超貴重よね。

ふふ。まぁ、この先やっていけるほどの視野をもてば、
一杯楽しめるわよ。きっとね。

……"それ"が、ハルとシオンの力の根源、か？
ミコト。儂の故郷でも聞いた響きじゃな。命を司る者か、なるほど、なるほど。
ただ儂が知る限り、その神に通じる屋号には「命令を受けた者」の意図も含まれるがの。

儂でも、主殿と同じようにしたじゃろうよ。
もっとも儂には誇りも葛藤もなく、ただ純粋に面白そうだと思うから着いていくだけじゃがな。

されど、主殿が"ハルシオン"に着いていったのは正解と思う。
気になったのじゃろう？　別れたのちに後悔しても、逃した契機は二度と手に入らぬのじゃから。

似ている、か。
シオンだったかハルだったかも、そなたを評して同じようなことを言っていた気がするが。
もしやその瞬間は、主人格そのものであったのかも知れぬな。……は。やってくれおる。

話を聞いた限りでしかないが、３つ、主殿に有利な点があるように思う。

ひとつは、扱い。
もし主殿を脅威とみなしているならば、知らぬ情報は隠し、都合のよい話を聞かせたことじゃろう。
しかし、主殿が敵わぬでいたラルクゥとやらを退けた力といい、歴然とした差があるように思う。
故に、奴は主殿をいつでも処断出来る駒と考えておる。油断あるいは慢心。だが、自信。

力には力で対抗する主義ならば、礼儀には礼儀を返す意味も含まれよう。
主殿が従う限り、安易に殺されはすまい。役立つ姿を常に見せ続ける必要はあろうがな。

もうひとつは、力。
シオンから聞いた話じゃが、主殿の力はあの球体には取り込めなんだらしいの？
主殿の体質の問題らしいが、少なくとも主殿の"魂の力"を強化は出来ても勝手に利用は出来ぬということよ。

とはいえ、儂でも見抜けなんだ主殿の力の源泉を、奴は主殿以上に把握しているようじゃ。
命の灯、か？　死者を招くのは副作用か。……少々妬けるな。が、今は儂のものじゃ、赦そう。

みっつめは、情報。
退屈しのぎであるとしても、実力に差があるにしても、奴は対話の相手を欲している。
長らく閉じ込められていた故に、言葉を交わすことに喜びを感じておるのではないかな。

たとえば、名前。恐らく最初の会話は"刷り込み"を主殿に仕掛けた形であろうと察する。
じゃが、主殿は誤魔化されずに尋ねたようじゃ。
真名……本名を知られれば逆転される目があることを、奴は口を滑らさざるを得なんだ。
自分の名前を知らないと云った口で、本名を隠していると思わせる言葉を聴かせた矛盾。
他にもあるな。"クロウ"とはなんじゃ。奴をウンザリさせたのは、何じゃ？

伝えたであろ、主殿。「駆け引き」じゃ。
奴も、主殿が心から忠誠を誓っておらぬことは織り込み済みであろう。
しかし奴にとって有益であり続ければ、いつしか期待が生まれ、そこへ油断が忍び寄る。
なに、肩肘張らずともよいさ。いつもの主殿でよい。それだけで十分、奴の期待に応えられるとも。

主殿は、奴が己と似ているというが、儂から云わせてもらえれば全然違う。
儂は「トガノ」を選んだ。他の何者を愛おしく感じようとも、抱かれるのはもう、そなただけじゃ。
百万の複製体が現れようとも、魂を別の器に入れられても、儂は必ず主殿を見つけてみせる。

そして、知っておるよ。
たとえどのような状況に陥ろうとも、儂の大切な主殿は、可愛い狐を残して逝きはしないことを。

…味を誤魔化すのが精々か

さて、どれ程のものか……

貴様は私がここで、止める・・・ッ！！

ここなら少しは味わわせてやれるかのぅ、・・・あたし様の力をッ！