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ある死神のお話。
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少し、変わったな・・・と、らすぬこは去りゆく葉蘭の背中を眺めていた。

彼女と分かれて。彼女は１５年ほどであるが、きっと彼にとっては物凄い月日が流れているのであろう。
世界を守る死神になるということは膨大な世界の流れに身を任せるということでもあるらしい。

彼女にはそれが想像ができないし、精神が耐えられるとも思わない。

最初はただ、ただ・・世界の素晴らしさを伝えたかっただけなのであった。
記憶を失い、食べ物の味を知らない、彩られた世界をしらない、命ある生き物との関わりを知らない。
そんな彼を、悲しみだけを背負った彼を。放って置くことはできなかった。

だから、食べることができ、全てを焼きつくす力を持つ以前へ。戻した。
それからの旅、彼はずっと笑顔であった。何が合っても笑顔であった。
世界は素晴らしい、世界は美しい。そう語る葉蘭をまるで幼子を見るようなそんな気持ちで見守っていたかった。

食べ物のひとつひとつに感銘を受け、景色のひとつひとつに感動し、不器用ながらでも人との関わりに幸せを見出した。

死神としての責務を最低限にし、各地を周る事もできた。
それをずっと続けていくという選択肢もあったと思う。


それでも、それが続くことはやはりなかった。
空っぽだった彼にはその世界の、人々の存在は美しさを、そして愛しさを増し大きくなりすぎた。


そして、その死神は世界に飲まれていく道を選ぶ。
ほんのひと時の幸せを胸に。


死神は正義の味方ではない。戦争も止められないし、飢餓も救えない。
世の中から不幸は消えないし、消えゆく命も守れない。

そんなものに意味がるのかと問うたことがある。
すると彼はこう答えたのだ。

「それでも、私は正義の味方にはなれないと思う。相手の事情を知ればきっとそれも愛してしまうから。
　だからね私は・・・愛しい人たちが思い、悩み、それでも生きていく為のこの世界を。

　守りたいのだと思う。私のできる、私の全てで。」


私のできる、私の全て。
それが果たせているのかわからない私には、それが正しい事なのかわからなかった。
ただ、そう語る彼の笑顔を見て。私はそっとその背中を押した。



１５年。彼にっとっては途方も無い年限。そんな中再び出会えた私を覚えていてくれた事は素直に嬉しくあり。
それは彼が戦い続けている証でもあると思うと複雑で。以前の瞳の煌きはもう見ることはできないのかもしれない。



そして、最後に私はこう思う。

一人称が"私"から"僕"に変わっていたなと・・・。

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（何やらジェスチャーしている）

　思わず頭を抱えたくなる。
　

　

　ちなみにシ・ドゥとはクーリアの契約エンブリオの名である。

笑顔で答えるも、纏う気配は一点してどす黒く。