「死にかけてる。」

　もう助からないかもしれないぞ。どうするつもりだ。

　「どうするも何も、私には君しかもう力と呼べるものはないから」

　白露、私との契約を解くつもりか

　「長い付き合いだったねえ。私を助けたように、これからはこの子のことも助けておくれ。」

　「今までありがとうサラマンダー。それじゃ。」

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　私が取り込まれたころ、この狐はまだ幼く、今のように変化することもできないただの獣であった。
　修行し、力を身につけ、一端の妖怪となるまでは非常に長い年月を必要とする。エンブリオである私を取りこんだことで、多少促進されたその成長を、元の宿主である白露は見守っていた。
　白露は、何の変哲もない妖狐だった。伝承に出てくるような複尾の大妖怪などではなく、ただ長く生きた狐だ。
　それが、この幼狐と接する時だけは偽の尾をつけて振舞っていた。白露にとって、ひいては妖狐にとって大事な点だったのだろうと、今の宿主がしていることで見てとれる。
　似たもの同士であるというだけなのかもしれないが、その性質がお互い影響しあったのかもしれない

　白露は長く一匹であった。親もきょうだいも子も、皆自分より先に逝った。
　その年月が結局は寂しかったのだろうか。気まぐれに助けた、一匹の弱い狐に自身を重ねたか。ただの獣であれば気付くこともなかったであろう考えを抱え、苦しかっただろうか。


　私という力を失ってしばらくすると、大分白露自身の力も弱まっているように思えた。
　姿を消した白露がどうなったのか、私は何も知らない。

　そう言うと、ロッテは武器をコルリの方へ向け

　大量のミネラルウォーターを今まさに撃ち出そうとしている！

ピシャリと、己の鼻前で指を振るって見せる。

人間は加減を知らない、と、その言葉になるほどと目を瞠って。

どうにもやり切れん話だ、とため息をついてから。