「……駄菓子屋？」
赤髪の女性の言葉に、戻ってきたイチゴウは小さく眉をひそめ、
「駄菓子屋さんが何で調査隊に？　……近海でとれる魚や海生生物に珍種が多いとか
　　　　　　何とかで、ごくたまに生物学者が調査に訪れるって話は聞いたことあるけど……」

「……それにしても『ラーライン・パルス』について、説明を受けてない……？
　どうなってるわけ……？　ひょっとして、あなたも、個人で島に……？」

「ああ、そうだ、ごめんねミアさん。　そこの人たちとミアさんのいたところはどうやら
　少し違うみたい。　でも、センセイならたぶん、ミアさんの通ってきた……」

そこで、小さなノックの音が聞こえてきます。
イチゴウは、あ、ごめん、待ってて、と言い残し、また柱の影へと移動して行きます。
短いやり取りの後、ガサガサと何かを運び込む音が聞こえてきて―――

やがて、イチゴウと一緒に、濃いグレーのスーツを着た三十台半ばから後半くらいの
男性が、たくさんの紙束を抱えて、柱の影になった向こうから教室へ入ってきます。
「……大変お待たせしましたね。　わざわざ遠いところをようこそお越しくださいました」

リリ(18)からのメッセージ：
（アジア人……日本人とは限定されていないな。ふむ）
誰かの反応を見ようと、イチゴウが柱の陰に行っている間に東藤タカシの手配書を目に付くところに置き捨てておく。

（ラーラインズドア、クエララプロジェクト、カドリング……さて、何のことか。…ん？）
と、机の中にあるレポート用紙を何とはなしに取って、人目から隠れながら広げて読んでみることにする。

町屋(478)からのメッセージ：
「何だか難しい話をしているよねぇ。学のない町屋にはさっぱり……」
　同じく大人しくしていた栗色の髪を持つ少女に話を振り、
「何隊とか、遺跡の中で兵隊さんなら何人か見たけど……それを言っているのかなぁ」

「あぁ、ほら、ゆらちゃん……勝手に触って壊しちゃったら大変だからねぇ」
　歩み寄ってきた少女に言い、エプロンのポケットを探る。リングを束ねた玩具を取り出し、
「はい、知恵の輪。……ゆらちゃんって、クエ……何とかなの、かな？」
　　　　　　ふと先程の話を思い出して尋ねる。

ユウ(1739)からのメッセージ：
『牧野瀬　悠です』

『この日本のこと、教えてもらえませんか？　私、もしかしたらあなた達の言う実験に巻き込まれてしまったのかもしれません。私の居た日本に帰りたいんです』

　帰りたいのか、そうじゃないのか、今は……考えてる場合じゃないよね。方法だけでも、わかるなら知っておいたほうがいいんだ……。……でも、この日本があの日本とは限らない。なんて、どうやって確認すればいいの？

ゆらゆら(1811)からのメッセージ：
シャノン「そうですね、それを知っていると言うことはそれ以降の人間になるということですね」


シャノン「『クエララ・プロジェクト』……？　いえ、実は私にも彼女の事は良く分かっていないので、宜しければそのプロジェクトとやらについて教えて頂きたいですね」


ゆら「名前ですか？　【由良木ゆら】です」



シャノン「んー、名前ですか？　どうしましょうかねぇ」


シャノン「え？　帰る方法ですか？　あの魔方陣あの魔方陣が怪しそうですが、どうでしょうね？」