ENo.715 Gun=Berry

（今回の日記はENo.615 苺龍さんとのコラボ、そしていちご大好きコミュの連動企画です。苺龍さんの日記や、当方のコミュなどもよろしければご覧下さいませ）

そこはセルフォリーフか、アンジニティか。夢うつつのような曖昧な世界。
オーバル状に広がった建物は普段何に使われているのだろうか。
周囲は夜の闇が広がる中、眩いレーザー光のようなライトが輝きを誇り、その隙間を縫うように空撮用のヘリコプターがすり抜けていく。

――――PM 6:30

メイ「ベリィちゃん！」

ベリィ「……はい」

メイ「とうとう始まるみたい！準備は大丈夫！？」

ベリィ「…まあ、ぼくは別に……いつも通りですし…」

メイ「いつも通り！？そんなことじゃだめぇー！」

メイ「この日の為に辛くて苦しい練習を乗り越えてきたのよ！スター…そう、メイたちはスターなの！」

ベリィ「………辛くて」

アップルさん「……苦しい練習ッスか」

メイ「ちょっと！二人ともなにようその顔！忘れたの、あの日々を！」

アップルさん「姉御そんなに練習してたッスか？」

ベリィ「そもそも練習は二週間くらいだし合わせたのは二回だけですけど……」

メイ「オーディエンスも待ってるわ！行くわよ、世界でいちばん目立っちゃうんだから！」

ベリィ「……そうですね、歌うのは嫌いじゃないですし……」

アップルさん「演奏に抜擢していただいて嬉しいッス！頑張るッスよ！」

メイ「二人とも、しっかりね！えいえいおー！」

ベリィ「おー…」

アップルさん「おー！」

メイ「ところでメイのギターはどこかしら！昨日から見てないの！」

ベリィ「………」

アップルさん「………」

集まった聴衆は3万人。満員御礼。
アリーナのテンションは最高潮だ。いちご色の赤いサイリウムが、客席を埋め尽くしている。
ステージのバックモニターに流れていたコマーシャルフィルムが、ふっと消えれば、大きな歓声と拍手が響く。

直後、始まりを思わせるホイッスルの音色。それまでの騒ぎが嘘のように、客席は一瞬、静まりかえった。

サイダーの炭酸がしゅわっと空を目指すように、バックモニターを彩っていたオレンジカラーに気泡のエフェクトが混じり、その色を溶かしていく。
溶けきったそこに映し出されるのは、二人の少女の、中心で分割された対照的な表情。

メイ「We are！」

ベリィ「Fragaria★Fragaria！」

スピーカーから飛び出して会場に反響する、二人のソプラノボイス。

世界を巻き込んだ『遊び』の始まりだ。
一度は大人しくなった客席のボルテージが一気に引き上げられたその瞬間を狙ったように、色のついた煙が爆発したようにステージ上で広がり、ぼんっ、という音が遅れてついて

くる。

二人の少女がそこから、長い髪をぱあっと後方に揺らしながら、飛び出した。

――――Fragaria★Fragaria、その1st Live、ひいてはアイドルシーンの輝かしい幕開け。

手に取ったギターを、じゃあん、と掻き鳴らすと、元気なメイの声がマイクに乗って会場を支配する。

メイ「ハロー！みんなゴキゲンかしら！」

メイ「今日はメイたちのライブに来てくれてありがとー！みんな目一杯楽しんでいくのよ！」

ベリィ「よろしくお願いします」

メイ「早速だけど始めちゃうわ！ベリィちゃん、タイトルコール！」

ベリィ「……Fruity says ☆ Shoot the unripe dream」

メイ「ミュージックスタート！！」

きらきらと星の流れるようなエフェクトと、カラフルな光の演出。
ベースのリズムに乗って二人が客席の方へと弾かれたように走っていく。

煽る手拍子に合わせて、アリーナから最上段まで、赤いサイリウムの波が広がって、その輝きに目が眩みそうだ。

くるくると回り踊る、金とピンクの二つ。

スタンドマイクの前に立つと、半ば飾りのギターを抱えたメイが一度大きく跳び上がった。

メイ「♪　視線の温度　耐えられなくて　青い春も摘み取った」

メイ「♪　優しくしないで　そわそわするの小粒な心行ったり来たり」

メイ＆ベリィ「♪　今の酸っぱさ覚えてね　熟しちゃう前に」

メイ＆ベリィ「♪　Dreaming lights」

メイ「♪　なれるならどうか可愛い果実に」

メイ＆ベリィ「♪　On your mark」

メイ「♪　でも走り出せない臆病なあたし」

メイ「♪　迎えに来てくれなきゃ！」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　混ざり合って一緒になって」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　変わるよりも変えられたい」

メイ「♪　アールグレイにひとさじ　ジャムを溶かすように」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　目と目が合って触れ合って」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　夢を叶えてどうかお願い！」

メイ「♪　箱庭の小さな椅子で　今はこの歌を」

メイ＆ベリィ「♪　温めているから！」

メイ「Please check the lock！ Can you hear me？」

ベリィ「Make up one's mind， 3 2 1 Come on！」

ベリィ「♪　雪が溶けて　春が来たなら浮かれるかしら？会えなくなるのに」

ベリィ「♪　あたしは咲いて　花になるから　小粒な心はそこでおしまい」

メイ＆ベリィ「♪　きっと忘れてしまうから　溜息は増すばかり」

メイ＆ベリィ「♪　Pasturing now」

ベリィ「♪　朽ちていくのなら誰のせいなの」

メイ＆ベリィ「♪　Forget me not」

ベリィ「♪　伝えてよ彼にこのままじゃきっと」

ベリィ「♪　ハートは穴だらけ」

ベリィ「♪　ピンクの口紅を少し伸ばして　フェイクなコートにさよならしたなら　素直なあたしになれる？」

メイ「♪　箒星に乗って自由な心で　あなたに会いに行けたら」

メイ＆ベリィ「♪　愛は届くのかしら」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　今日からはもっと強い自分に」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　変われないなら変えてあげる」

メイ「♪　動き出そうこの足　力の限りに！」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　目と目合わせて頬に触れて」

メイ＆ベリィ「♪　Fruity says　想い伝えたいどうか今すぐ！」

ベリィ「♪　箱庭の椅子にひとつ　お別れのキスして」

メイ「♪　駆けていこう真っ直ぐに」

メイ＆ベリィ「♪　あの歌を　マーチにして」

ベリィ「Please check my eyes！ Can you show me？」

メイ「Make up one's heart， 3！ 2！ 1！」

メイ＆ベリィ「Let's smile！」

――――　曲の終わりを迎え、二人の下にまるで豪雨のような拍手と歓声、そして声が降り注ぐ。

ライブは成功だ。生中継で世界中が今、新たなアイドルがスターダムに名乗りを上げた事を知っただろう。

未成熟な二つの果実が花をつけて羽ばたいていく。

伝説は　―――これからだ。

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ベリィ「……っていう夢を見たんですけど」

『……先を急ぐぞ』

『呑気なもんねぇ』

ベリィ「……………」

ものすごいスルーされた。ショック。