ENo.3135 ルージュ・エル＝セルヴァン

ルージュ・エル＝セルヴァン。彼女は異界の吸血鬼である。
彼女が元居た世界は何よりも人間が繁栄を極めていた。
怪物妖異の存在は忘れられ、街の闇は文明の灯火に照らし出されつつあった。彼女ら吸血鬼も例外なく、闇に潜み、やがては歴史から姿を消してていく。そのように見えた。

だが実のところは違った。
文明の灯の届かぬ闇の中、永い時の中で培った叡智、そして強大な異能の力で以って吸血鬼は人間社会の裏側に君臨し、実質的に彼らを支配下に置いていたのである。

ルージュもそんな吸血鬼の中の一人であった。
吸血鬼として生を受けてから既に数百年から数千年が経過しているが、外見は15，6歳の少女である。
だがしかし、彼女はただの吸血鬼ではない。吸血鬼の血族の中でも最高位の氏族、血宵鬼。その中でも無類の力を誇り、暴君として恐れられていたのである。

腰ほどにまで流れる淡い銀色の髪は見る者を魅了し、
血を思わせる鮮紅の瞳は、見る者を戦慄させた。
普段は赤のドレスと、黒のニーソックスを身に纏っている。また動き回る小さな熊のぬいぐるみを使い魔として所持しており、これを使役して情報収集等をする。

性格は一見、悪逆非道に見えなくもないが、暴君として振る舞った為に孤立してきた彼女は、自分以外の者達に興味を抱く事も多い。それが彼女にとって面白そうであると判断したならば、困っている者を助ける事もある。非常に気分屋であるが、一度殺すと定めた目標は、絶対に逃そうとしない。それは血宵鬼の掟であり、それを破った者は力の制限を受ける事となる。
また、普段から偉そうにしているが、生まれてからの孤立の所為で、割と根っからの寂しがり屋でもある。

彼女がアンジニティに飛ばされたのは、彼女の世界で僅かに生き残っていた吸血鬼の天敵、人狼の隠れ里を滅ぼした直後であった。
彼女は今、アンジニティに飛ばされた事で迂闊にも逃がしてしまった一人の人狼の少女をどうにかして探し出し、殺す事を密かな目的としている。

ただ目下のところ、現在の彼女はアンジニティに集っている猛者達と戦う事を至上の喜びとしているらしく、制約により失われた力を取り戻すのはどうやら後回しになりそうである。

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※イラストは都賀京助さんに描いて頂きました。感謝！