リィシアは少し乱れた呼吸を整え、話を続ける。

リィシアはそう言って、笑顔で話を終える。

僕は目を閉じて少し考える。
リィシアはレラという子——先代にそう言う名前の人はいなかった気がするけど今はそれを考える時ではない——に出会い、それをきっかけとして僕の中に入り込んだという事か。
その方法や今ここにいる事ができている理由がざっくりと省略されたけど……これはまた後で聞く事にしよう。

彼女は紛れもなく『レスティア＝ノール』の妹で間違いない。
そして彼女の言葉に嘘はない——不思議とそう確信できた。

僕は目を開き、そう彼女に告げる。
僕の選択はもう決まっている。
いや、ここにきた時点でもう選択されているようなものだ。

必要だったのは自分の意志を確かにする事。


あるべき処に帰る。
『レスティア＝ノール』の一部である僕がその母体に帰る。

不安？そのような物は微塵もない。
僕は僕である事を取り戻すだけなのだから。


僕は『レスティア＝ノール』の手を取り、感じる流れに身を任せる。

視界が光で満たされる。いや、僕自身が光となる。

遠のく意識の中、ふとリィシアの方を見る。
彼女は不安混じりの顔で僕を見守っている。
大丈夫だよ、と僕が微笑むと彼女も少し安心したように微笑んだ。

そして僕の全てが光となり、あるべき処に収束する——




・〜・〜・〜・〜

光は収まり、次に目を開いた時、目の前には青空が広がっていた。

僕は起き上がり、傍らに佇む人影に目を向ける。

不安顔でこちらの様子を窺うこの子は僕の為に様々な苦難を乗り越えてやってきた、僕の大切な妹。

シアは言うなり僕の胸に飛び込んでくる。
僕はその勢いにバランスを崩しそうになりながらも何とか受け止め、抱きしめる。

僕は抱きしめたまま、泣きじゃくるシアの頭を優しく撫でる。
離れ離れになっていた永い時間を埋めるように、僕達は暫くそのままでいた。




・〜・〜・〜・〜

シアは僕に抱き着きながらずっと頬を緩めている。
ようやく再開できたのだから無理はないし、僕もきっと頬が緩んでいるだろう。
しかし落ち付いてきてからふと頭をよぎった事がある。

ここは僕の内面を構成している情報の一部だ。
こうしている以上、現実の僕が死を迎えたという事はないだろう。
そうするといったいどのような状態なんだろうか……？

そんな感じで横道にそれた思案をしていると、それに気づいたシアはしょうがないなぁといった顔でその疑問に答える。

ベルフィって子にコテンパンにされちゃったからもう少し回復には時間がかかりそうだけどね、と付け加えた。
そう言うシアの表情には「次は負けちゃ駄目よ」といったオーラを感じる。

手厳しい……。

そう言ってシアは虚空に手を掲げる。
そうすると、どこからか光の雫が集まってきて、シアの身体に入っていった。

シアは光の雫——『システム』にそう告げるように呟いた。
そうか……シアはずっと前から僕の事を助け続けていたんだ……

表情をころころと変えた後、手をパタパタさせながらシアはそう言った。


まだこれから……そうか、まだなんだ。

そう言ったシアの身体が光に包まれ、その光ごと小さくなっていく。
そこから現れたのはシアをデフォルメしたような妖精の姿だった。

僕達は笑顔で手を取り合い、言葉を交わす。



シアは僕を転生の呪縛から解放する為に。

そして僕はシアの願いに応える為に。


僕達は新たな目的と共に目覚めの時を迎えた——