■ Day 46 ： 目に映るもの殆どが赤い

　アタシは今、天蓋庭園と呼ばれている場所にいる。庭園ってゆーくらいだからとても綺麗なところなのかな、と期待しながら案内されたら、実際はおぞましい場所だった。用が済んだら今すぐ抜け出したいほどだよ……
　とゆーのも、見渡す限り赤いとゆーか、空を覆い隠すくらいのネクターが庭園中にびっしり咲いているのだ。まるで花でできたトンネルをくぐってるみたい——と言えば聞こえはいーかもしれないけど、その花自体がギラギラと光っているよーに見えて、更にそのトンネルもどこまで続いてるのかわからない……そんな視界一面が赤で覆われた場所に、今立っている。

　キエメくんは朝から具合悪そーな顔をしている。

　ゴホゴホと咳き込んで、はあはあと熱そーな息を吐く。こーゆー時自分がお医者さんだったらよかったのにな、と強く思った。ケースがやって来てキエメくんの背中を擦ってくれたけど、同じエンブリオの宿命なんだろーか、節くれだった枝みたいな片手を口元に当てていた。

　そー言われてヌイさんのいる方を見たら、壁を作っていたネクターの1つを触っていた。それを様々な方向から見ようと手首をしきりに動かしている。

　少し荷物整理しよーと荷車に近付いたら、ふと昨日作ってもらったケーキが目に入った。あれも材料は赤いけどよくわかんない果実だったし、そーいや戦った時に案内してくれた女の子も赤い髪のだったし、ルリアンナさんのお父さんっぽいおじさんも赤い髪してたな……最近のアタシは赤いものばっか見てる気がした。
　それから連想ゲームみたいな感じで色々と考えていたら、ハナちゃんの頭の花も赤かったなー、と。花の種類がまだわかんなかったちっちゃい頃、それってネクター？　と聞いてみたら

　……と言われたのであれはれっきとしたケシの花だと信じたい。
　さて、今日も変な敵が出てこないといいなー。