水の流れる音が遠くの方から段々近づいてくる。
そんな感覚がした後、薄暗い視界にテントのてっぺんのシミがぼんやり見えた。
どのくらいの時間寝てたのかは分からない。その前のこともあんまり覚えてない。人狩りの一団に見つかって、とにかくやらなきゃやられるってことで頭がいっぱいだった。結局指一本触れることも出来ないまま、体の方が先にへばって意識が途切れた。

静かなテントの中で自分の呼吸の音が耳から、鼓動の音が体の中から聞こえる。とりあえず生きてるみたいだ。気持ちは変なくらいすごい冷静なんだけども。外に出ようと体を起こすと圧迫感がする。多分包帯かなんかが巻かれてるんだろう。ちょっと痛くてかゆい。

入口のチャックを開けて外に出ると、朝焼けの空の下でジャネが切り株に腰かけていた。

『おはよう』

座ったまま寝てると思ったから不意に声を掛けられて驚いた。
おはようなんて言う気分になれなくて生返事を返す。

「…どんくらい寝てた？」

『一日だな。なに、大したことじゃない。』

互いに視線を合わせないまま言葉を交わす。

「あいつは？」

『アーシャちゃんなら心配いらない。うまく逃げた後、戻ってきたよ。包帯を持ってきて手当をすると意気込んでいたけれど、任せるには不安だったから包帯と気持ちだけ受け取った。』

そう言ってジャネは少し離れた場所にあるテントを指差した。

「そりゃ良かった。遠慮してもらわなかったら今頃ミイラになってたぜ。」

思わず乾いた笑いがこぼれた。

『彼らは金銭と役に立ちそうなものだけ奪って去っていった。幸い、命まで取る気はなかったようだ。』

「幸いなのかなぁ。こんなギリギリのとこじゃなくてもうちょっとツイててもいいと思うんだけど。ガキの頃、ガラクタ溜めこんでたクッキー缶の宝箱の方がいいもん入ってたよ。」

視線を落とすと白い包帯が目に入る。
徐々にハッキリしてきた頭に一つ疑問が過ぎった。

「…なんかさ、傷、もう治ってきてんだけど。」

致命傷になるほどの急所は外されていたにしても動けなくなるくらいにはやられたわけで。それにしては傷の治りが早い気がする。

『…薬が充分な量手に入らなくてね。
……ボクの細胞をお前に移植した。』

「…は？」

予想もしなかった答えをぶつけられて口が開いた。

「えっ…それ…大丈夫なのかよ…？」

『安心しろ。体には何ら変化は起きない。』

「安心しろって…よく分かんねぇよ。普通そんなことできないだろ。」

『……普通はこんな無茶苦茶なことはできない。
………お前だからできるんだ。』

こっちに背を向けたまま呟くように言った。


『別に特殊な力が使えるようにはならない。一時的に傷の治りが早くなるだけ。それだけだ。
…ボクはそれ以上のことはお前に出来ない。』


ジャネは宣告でもするような口調で喋ると俺を置いてきぼりにしてテントの中に入っていった。

>物騒な人

珍しく演技でなく消沈した様子で、尻尾も丸まっている。

PSの破片が飛んできました。石ですがおひねりでもあります。
どっちの評価かわかりません。

ひらひらっと楽器の方を指さしました。

そういったあと、思案するように首を傾げました。そして、暫くユーグレさんの話を聞いた後に

と、軽くスルーした。本人悪いはという自覚無し。

ネタにマジレス、そんな勢いだった。