草木や花々が溢れ、楽園を模したかのような庭園とは打って変わり、この場所はひび割れた大地に枯れ木と岩が点在するだけの灼熱の荒野だ。まるであの疑似楽園を作るために水の一滴まで全て奪い尽くされてしまったかのような有様である。
堪え性のない二人の若い連れがやれ「暑い」だの「歩けない」だの渇いた口から不平ばかり垂れ流す。
その様子に思わず溜息が出てしまったその時だ。殺気だった荒々しい気配を背中に感じたのは。

仮面をつけたブリキの樵、生身の人間の体を持つ案山子、銃を構えた白い獅子、大鎌を持つ黒ずくめの少女。
以前研究のついでに異世界の様々な文献を読み漁っていた折に出会った、彼らにどこか似た人物達が登場するお伽噺を思い出す。絵本の中の彼らはそれぞれに足りないものを求め、魔女の力を借りながら、万能の力を持つ魔法使いが住むという、美しい宝石の都を目指して旅をしていた。

本の外には宝石の都など存在しない。ここにあるのは砂と塵ばかりだ。

魔法使いも魔女もいない中、彼らが求めるものを手にするには。
彼ら自身が力を得るしかないのだろう。
それが誰かから奪う形になろうとも。

Janet.A

レント＞

ユーグレ＞

リマ＞

（逆に怪訝そうな顔をして青年を見上げる妖精）

シャリン——、シャリン——
　どこからともなく音がする。

　　　シャリン——、シャリン——
　　　　それは、だんだん近づいてきている、そんな気がする。