ここ数日で、契約しているエンブリオの数が一気に増えた。

相性がよさそうなエンブリオに出会えて、無事に倒して契約できているという訳で。いい調子、なんだと思う。
どうやら、契約できる数には上限があるみたいで、別のエンブリオと契約するために、契約していた１体と解約をした。
…ちょっと寂しいけど、仕方ない。

そう言えば、どうしてアポルはこっちの世界ではエンブリオとして契約できているんだろう、と不思議になる。
元の世界では言葉が喋れなかった、…というより、言葉が通じ合わなかったのに。
草食性で基本的に大人しく、争いを好まない気質の生き物。
額の結晶には周囲の魔力を取り込む性質があると聞いたことがあるけれど、個体自体は魔力を扱えず、魔法のような特殊な力は持っていなかったはず。
それが戦いの時にはエンブリオとして、確かに力を与えてくれている。
以前アポルに直接尋ねてみたものの、本人にもよくわからないということだった。
世界移動をして来る時には、アポルも一緒に連れて行くことが既に決まっていたのだけれど……。
お父さまかお母さま、家族の誰かなら知っているかもしれない。
でも、大したことじゃないし。
元の世界に戻った時、憶えていたら訊いてみる、くらいの気持ちでいいかな。

　クロエは目の前の相手を軽く殴るように、拳を前に出している。

やや後方に下がると、無言で弓を構えた。