いつものように「どうぶつおうこく」というクソださい看板が立てられている家に戻ってきた。そろそろこの名前もなんとかならないものかと思うが、今更どうでもいい気もする。

　昨晩バケモノどもに肉をえぐられた箇所や、付けられた傷はあっという間に癒え（トカゲの治癒力のおかげか、はたまたエンブリオどもが気を利かせて何かしらの魔法を施したのかは知らないが。尻尾が引きちぎれても爪がへし折れても一時間ほどでそっくり元のように戻っちまう身体だし、もしかしたら治癒力のおかげかもしれない）、仲間たちに対して何事もなかったかのようにふるまうことを許された。
　俺のただいま、という声に、ガルボさんはいつも通り台所に立っており、目と歯をギラつかせ、カタコトでオカエリナサイと返す。
　とりあえず、戦いには負けちまったが結果的に強くなれたこと、拾ったもの、どのエンブリオを成長させたかをアマドに報告する。
　アマドはいつも通りのさわやかな笑顔で、おつかれ、と、俺の肩をぽんぽんと叩いた。

　ミヤコが、おかえり先輩と言いながらとたとたと駆け寄ってきて、やや心配そうに俺の顔を見つめる。俺は小さな頭をわしわし撫でると、大丈夫だ、と一言添えて部屋に戻った。

　俺は再び自身の”変わり果てた”手に、体に、視線をやる。
　薬指と小指が極端に短い。
　手足の鉤爪は異様に太く長く、獲物を捕えたり、裂いたり、仕留めたりするのに適している。
　手の甲から顔、首、全身にかけてはヒトの皮膚の上からぬるりと鈍く光る、緑色と黄土色を入り交ぜたような鱗がびっしりと生え、
　それらはむやみに引きちぎると皮膚からじんわりと血をにじませ、再びもとのように生え揃う。
　尾てい骨からはトカゲのそれと同じ尾が生えている。
　また、顔は凶悪なものへと変わってしまったし、口は割け、大きく開くようになっている。
　口内に納めるものは、二つに分かれた舌と、肉を喰いちぎるための鋭い牙。


　ぼんやりと、俺に魔法をかけた魔女、リイオ・ロボトミの言葉を思い出す。
　このバケモノの体で、俺は……

　

　……嘗ての望み通り、仲間を守れるんじゃないのか。

名乗り、男は———星瀬グリムに向かって手を差し出す。
契約者の事はまだ認識していないようだ。