「暴れるな」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　———— 鶏肉を食べる資格

　大国レージェントには大きく分けて二つの戦力を持つ。
　ひとつはそのまま国軍であり、もう一つは女王のための騎士隊である。

　≪レージェント国軍≫
　徴兵制度もあるが志願制度もあり、前者は規定年数、後者は規定年数以上を最低とし自分の意思で辞すまで兵士として動く。年数は種族によって異なり待遇も良い。ある種のインフラ。人数は流動的。
　軍団長のみ結成当初から在籍しており国軍において彼の命令こそ絶対。

　≪騎士隊≫
　コノエ率いる女王親衛隊。国軍の中から特に才能と忠誠心あるものが軍団長により選び出されコノエが試し選抜した者達。騎士隊の一員となった者のみが騎士を名乗ることができ、三人一組で女王の警護に当たる。数はコノエを入れて最大二十二名。
　女王より拝命したのはコノエのみであり、他の騎士はコノエから任命された。

　この二つに属するものは基本的に休みなしである。交代での休みはあるがそれでも招集が掛かれば何もかも投げ出さねばならない。それが義務である。
　しかし女王自身によって、彼らにも休みが与えられた。どんな非常事態が起きようと（自分で駆けつけるかはともかくとして）その日だけは丸一日、誰にも邪魔されることはない。
　冬の風物詩、『繋祭（つなぎまつり）』である。
　一年の終わりの数日前に催される宴。身近な者達と過ごせるようにと女王自らが企画し、根付かせたものだ。。当日を基準に前日を前結（まえゆい）翌日を後実（あとみのり）と言い、前日は恋人、当日は友人、翌日は家族と過ごす。無論その限りではないが建前というものだ。
　王宮の最も外側、門に近い広間が開放され三日間だけは出入り自由となる。そこには趣向を凝らした料理は勿論、秘蔵の酒に芸の催しなど娯楽の粋を結集してあるのだ。無論、警備の騎士隊も兵士も居るが三日のうち一日だけは彼らも必ず休むことが出来る。むしろ休めと命令されている。
　それはコノエも例外ではなかった。



　慣例としてコノエに休みを命令したまでは良かったものの、彼は早朝から嬉々として七面鳥を絞めに出かけてしまった。
　普段から人間だろうと魔属だろうと必要であれば平気な顔で殺せる彼は、当たり前ながら動物を絞めることにも抵抗がない。
　私はそれをなんとも思わないけれど『休みなら普段は買い物で済ませている部分までできます』と楽しげに話すコノエは間違いなく変わり者だと思っている。ずっとずっと前から。
　丸焼きにするのがあまりにも一般的すぎて他の調理法がちょっと出てこない。それくらいに七面鳥の用途はイメージが先行している。それをコノエは自分で飼育し様々な料理に使った。唐揚げ、チキン（？）カレー、鳥刺し等など。そのフルコースを私に出すのが毎年の楽しみと言う。
　繋祭ではコノエの料理がいの一番に無くなる。朝からなのに夜まで鳥尽くしでも完食できるのがその証拠。
　それでも私は知っている。
「どうぞお召し上がり下さい」
　美しく盛りつけられ、取り分けられた肉を一切れ。美味しい、という感覚以外を消し飛ばされたかのように何もかもが遠くなる。
　目を、鼻を通り舌先を侵す美味の感覚。胃より先に消化せよと唾液が溢れ、食べているのに生唾を飲み込む。
　繋祭で一度だけつまみ食いをした。私は公務中で飲食厳禁だったけれど、メイドが少しだけ取り分けて。それを食べた。
　皆が絶賛し、一年の楽しみと言って憚らないその料理。



　彼は手を抜いていた。私が口にするもの以外には。

　　　　　　隠れているつもりである。すごくバレているが。
　　　　　　物陰から「踏まないかなー」と様子を見ている！

うなずきながらコノエの話を聞いている。

ボクは戦いの経験とか無いんだけどね。と続け、今までの戦いやアリスが自分1人では戦えないらしい事などを説明する。

そして情報の大切さをコノエに言い返されて

何も言い返せなくなる。知識不足と言うかまだまだ理想だけが先走っていて、それの土台となる物が圧倒的に不足している。
それでも何か言い返そうと口をパクパクしてるが……結局言葉にならずに「むぅ。」ともう一度うなってそれっきりになってしまった。

既にシーツは偽者扱い

めくった！──アリスはそう思ったが、実際は手首の捻りに合わせて黒シーツのエンブリオがくるっと回っただけだった。

首をかしげながら踊る２匹を見る。
２匹はまた投げ（？）られたくないのか、ヴィンテから距離を取ってこちらに近づいて来ない。