ずぐん、と重く痛んだ胸に気を取られた瞬間、攻撃をまともに受けて息が止まった。
視界が眩んだのは、身体を突き通っていった衝撃のせいか、それとも、引き伸ばされていた限界に近づきすぎたせいか。
立っていられずに倒れ込む。
頬に触れ、くちびるを撫でる砂粒の熱さ。それを感じたのも、ほんの一瞬。
間を置かずに目の前の情景が光の膜に覆われ、色が唐突に鮮やかになったかと思うと曖昧になり、そしてすっと暗くなる。

負けたのだということには、闇の中でもすぐに気づいた。

死んだのだろうか、とぼんやり思う。
この無明に漂い続けることが死の在り方ならば、それは思っていたよりもずっと心地よいのに、と。

天地の別もわからない空間で、ぐるりと首を巡らせる。
静かで、ほんの少しだけ冷たい空気。
わずかに感じる肌寒さが、肌の輪郭を周囲の闇と隔てていた。
自分自身に感じる違和感。この静謐に、私という異物が紛れ込んでいる。

ここは違う、となにかが告げる。

私はまだ、この闇に融けてゆけるほど澄み切っていない。
あてどなく流れ続ける永遠を澱ませる結節点。柔らかな静けさを乱すもの。
死にさえも受け入れられることのない汚泥の一塊、それが私だ。

それを自覚すると、遠くはるか闇の向こうに、かすかな光が、針の先ほどに小さくきらめいたのが見えた。
その輝きに、爪先を向ける。
どれほど遠いのかも知らないまま、歩き出す。

やがてどれほど歩いたのかもわからなくなった頃。
その色が故郷の夕暮れの色だと目に見えるようになり、周囲の闇が、薄くなって——

ふと気づくと、ウィスプが、うつ伏せに倒れた私の隣で、瞬いていた。

目を閉じる。
眼を開く。

生きていた。
まだ。

しきりに背後を振り返りつつ進む。