送り狼なんて聞いたことも無いエリアであった。

顔を真っ赤にしながらツヅミの両肩を掴み、ぐいーっと押し退ける。
顔を隠そうと背けるが全く隠れていない。

裏話に関わるほど人間と接触する機会も無かったので実はほとんど話せることがないエリアであった。
しかしなんとかごまかそうと必死であるっ！

相手の話も聞きつつ、対話しながら弾き語りは続いていく。
黒い耳を立て、小さく動かしながら。

今妖精さん断ちするときっと身体が震えてくる

未だ頬の赤みが取れない顔で見つめながら

一見はまともな感じに見える妖精さんだ。

狐火を生み出すのを横目で見、中に入っていくのを見届ける。

力場に従って中に入っていくとそれほど時間がたたず結構広い部屋へとたどり着く。
そこは畳敷きで少ししめった香りのする部屋だ。ただ、壁は石造りのようで、気温はひんやりとしている。
壁際に袋やら箱やらが整然と並べられている。ハンガーなどもかかっており小さい服が目立つ。
また、真ん中にテーブルとイスがあり、テーブルの上にも同じセットが置いてある。おそらく妖精用だろう。
そこの上にはわずかな灯りがある。そしてその光を放っているものはこそこそと動いている。

溶けかけのかき氷を手渡す

取り出したはちみつから何かを抜き取り自分の炎と粘土のように混ぜていく

息が吹きかかるような距離で不意に触られると目を大きく開きぞぞぞっと体を震わせる。
反撃などはせずせめられるのに任せているようだ。

そんな話を聞いてちなはよりがくぶるしてます

フェウの身体が淡く赤熱しているように見える

※時間見つけて頑張ります

くつくつと、笑い。

口ぶりとは裏腹に、表情には笑みを浮かべる。
暴れられるなら構わないと、その表情が雄弁に物語っていた。

要点を纏めると

隔意がある、といわれると

そういえば最近自分が年老いた時や死んだ後の話をすることが各所で増えたな…とぼんやり思い。

大きく頷いたツヅミに微笑を返す。

/s29/だめだよだめだめっ！
大体先祖の偉業や格好よかった話ならともかく、恥ずかしい話なんて僕なら聞きたくな……ってわあああああっ

ツヅミがベッドの中云々の話をしはじめたのに大声を上げて遮る。

頭をぽふぽふと優しく叩かれたのに、力ない笑みを返してぽつりと呟く。

ツヅミを捕らえようとしたのはどの部門だろう？
先ほどの九尾の話とあわせて考えると、戦略開発部門？まさか。

自分の考えにふるふると首を左右に振り。

きっぱりした口調と穏やかな瞳でそう言い。

元々安物なだけにもう随分古びてしまった首輪にそっと手をやる。

研究所から出てから出逢ったこの妖狐にはいろいろと教わった。
いわば外世界の師であり、共に生活をする仲間でもあり、女性というものを初めて知ることになった相手でもあり。

改めてツヅミの姿を興味深く見つめて。

悪戯っぽく微笑みながら顔を覗き込む。

変態かな？とくすくす笑い。

尻尾をぱたんぱたんと不満げに振ると、ぜんぜん理解できないよという顔で抗議した。

困惑しきった表情で貴女を見つめている。

ふん、と小さく鼻を鳴らした。

ささやかな疑問を口にしつつ、首を傾げる。

そういう知識はツヅミさんの方が明るそうな気がしますが、と苦笑した。

紅潮した頬を手で押さえ、ぐぬぬ、と悔しそうにしている。

他でもない“当人”が言うんだから間違い無えぜ、と鼬は哂った。

ゆらり、と尻尾をひと振りし、仔鼬は欠伸混じりに呟いた。

夜も明けた後、開口一番に出たのは…彼女への労いの言葉と、唇への軽い口付け。
トガノの息もだいぶ上がっているようだ。

ツヅミの頭に手を添え、胸の方に抱き寄せ。

顔を見つめる。

顔を背けられてしまったので、首筋に自らの顔を沈めて小さく舌を這わせる。

くすぐったそうに表情を緩めながら、背や髪を擦って尚も彼女のことを求める。

軽く失笑し始めた。

ただただ興味ありげに問い掛ける。

彼女の身体を柔らかく包み込んだ。

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赤面したまま、どこか納得した風にぽつりぽつりと喋っている。

軽く首を振り、それ以上は言おうとしない。
考えても分からないことは考えない主義なのかもしれない。

少しそわそわとし始めた。

不安の色が宿った表情で、不思議そうに問い掛ける。

具体的に　何、が嫌がるかと言われても答えを出すことはできない。
急にうつむいて、言葉を濁らせる様子だけならばとても子供らしく見えるだろうか。

相手の言っていること。
その言葉が示すもの。
少女にとってそれが正解であっても、他ならぬ少女自身が理解しておらず。

この体に何ひとつ残らぬ、当時の記録は、ここから遠い場所にあるのだから、
一番の禁忌　を抱く自身の胸の奥などを吐露する事もなく、首をひねるばかり。

改めて。
何故。
そう問われると、この問いもまた明確なものが提示できずに、詰まってしまう。

けれど先ほどとは異なり、わからないなりにもまだ、知りうる存在だからこそ。
瞳を閉じて、胸に抱く思いを正直に口にする事はできるだろう。

それが。
自身の存在を支えるが故のもの、親への愛情、生存本能、以前の少女から引き継がれた思い。
さまざまなものが混ざり合っていたとしても。

話題はかわって、目の前に広がる結婚式。
相手が言う、笑っているのに泣いている状況が視界に映されることでようやく理解ができたのか。

ぷぅー、と頬を膨らませて……怒る、というか、正確には、拗ねるような。