ふむ，一般的な知識じゃな。
強いて言うならば，鋳造ではなく鍛冶で作られる故に作る手間は数倍では足りん。

銃弾数発ならば，上手く当てれば撃たれても斬ることが出来る程度には切り裂くことに特化されておるの。

少々考えが過ぎたかの？

自然物になったわけでもなく，人の手を経て打ち鍛えられ，作られたことには変わりない。
…熱伝導率が異状なんじゃよ。
本来ならば，熱伝導率が高ければ高いほどに熱を逃がしやすく，強度を保ちやすく，より良い強さを持つ良い鋼である…のじゃが。

まるで生きているかのような，一定の温度を保つのじゃよ。
代謝があるわけでもなく，生きているわけでもない玉鋼。
じゃが，ある温度を境に下がることは無い。
加えて，それによる強度の低下も無い。

本来ならば鋼にはありえない現象らしい。

生まれてそれほど経ってはおらぬが，元は神であったほどの神格を有した妖怪の妖気を受けて生まれたからのォ…力比べになると言われても，何が起こるかわからん。やらせぬのが無難じゃな。

まあ，勝手はさせぬようにしておくれ。
消すのも消されるのも，いい気はせぬよ。

仇の妖狐を探しているとなれば，もしかしたらどこぞで見かけたかも知れん。
不審な者を見かけたらチェックしておくよう，留意はしておこう。

大事ではある。
なんせ，その妖狐を含めた皆が同居人であり，家族であるからな。
それに心配はしておらぬよ。
それだけ信頼しておるし，道を外したならば相応の理由があるというもの。
もし間違いを犯していたならば，正さねばならん。

俺に打てるとしたら，じゃがな。
鍛えることは出来ても，所詮は母の真似事。
母の腕は素晴らしかったらしいからのォ……

(もしも，もしも。
俺が村正として打ち鍛えられていたならば…どんな刀になったじゃろうか。)

え……ええと……こっち見ないでくださいませんか……？
友だちだと思われると困るので……。

急に敬語を使い始めながらある意味、ノリノリで目をそらす。
悪ふざけは嫌いじゃないらしい。

……過去は残る、忘れることもできる、ね……。

なんか、偉い人の格言みたいな感じ。
アンタ、ときどき変だよな。学者センセーみたいなこと言って。

わ！

……ほ、本当に浮いてる……。

わ、わ、わ！

えっ、あ、お前、足が……？

わっ、お、お前、転ぶなよ？
だ、だだだだだ大丈夫なのか？

手を差し出した方がいいのかオロオロ、狼狽える。

・・・雀、先に行く。

おい待ちやがれ狐ェ！ちくしょう、手間ァかけさせやがる！

ん？なんだ？餌か？