刹那の交わり、その最中で、少女の瞳は虚をとらえた。
彷徨う焦点、零れた吐息、せりあがる——
身体から溢れだした何かが風の形を借りて巻き上がった。

少女を中心に髪を上着を薄布を不釣り合いな衣裳を靡かせて昇って流して暴れて
青年の紫髪を玩んで鎧を飾る布を連なる鋼板さえも掴んで引き摺って駆け抜ける。
それは暴力的なほど圧倒的な「さけび」
痛みを傷みを悼みを悽みを愴みを叩きつける声なき声
現世から掴み切り取る夢幻の飛び星の尾


ぶわり！


薙がれた全てが凪を取り戻す。

そう、だって。
少女はただ何度か瞬きをして、貴方を見ている。

『何事も無かったかのように』

悪戯をする前の子供のような、そんな笑顔を置いて、少女は踵を返す。

事の成り行きを見ていたエンブリオが、男の視線の高さまで浮き上がる。

揺れる前髪の下、澱んだ紫がちらりと見えたころには、
ヒトガタもまた、星を映す水面へと翔けていった。