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まだ彼らの音楽がすぐ近くから聞こえる気がする。
護りの森を離れてからはかなりの時間が経っている筈なのに、それはずっと続いていた。


入り組んだ屋敷の探索中、少し手を休めて古いオルゴールを取り出す。
森にいた“彼ら”、フォッセグリム達から受け取ったそれは閉じたままだ。
何度か開けようとしたが、なんだか怖くて出来なかったのだ。

「これが……私の“ゴードニア”なんですね」

そう呟きながら蓋に埋め込まれた大きな宝石にそっと手を触れる。
その時、鎧の下にずっとつけていたネックレスが少し熱くなった気がした。

「まだ信じられない……ここに来てからのことが全部夢だったらいいのに」
「目が覚めたらお父様とお兄様、お姉様のいるゴードニアに帰れたらいいのに……」

でもそれらの自分の大切なものや、自分自身すら本物ではないと知ってしまった。
知っている以上、それを願うことが本心なのかどうかもわからない。

そんなことを考えながら屋敷の探索に戻ったのだった。

グレンダが時間を気にしてる素振りをしているのに気づく

兵舎へ行くというグレンダに少し違和感を覚える

そういうと、二人は互いの進行先へと歩を進めた

薙疾は自分の国に対して、少しだけ物思いに耽る。

故郷を思い出しているのだろうが、あまり明るい表情には見えないのは
普段明るい彼女の印象と違うからなのか、それとも明るくはなれない思い出でもあるからなのか。

そう言うと、薙疾はグレンダに少し訝しげな顔を向けてくる。

「私は、メルンテーゼから出られない」


やはり、グレンダの呟きは届いていなかったようだ。

彼女は、「ゴードニアからやって来た王女」と言う話に未だ疑問を抱いていない。
メルンテーゼから出られない、と言う言葉が額面通りであれば、ゴードニアから追放されて戻る事が出来ない。
もしくは──そもそも外の世界になんていたはずがない。
どちらかの意味に辿り着くはずだ。



　　　　　そして、グレンダを信じる薙疾は。

　　　　　　　　　　　故に、触れてはいけない部分に容易く近づく。