真っ向勝負でカーラに勝つことはまず不可能だ。

もちろんボクはここにまったくの無策で来たわけじゃない。
だけど、それがきちんと嵌ってくれるかどうか・・・。


それにはまず、カーラをこっちに思いっきり引きつけなければいけない。
こいつは射程がバカみたいに短い。戦闘で使うものじゃないんだ。





ボクは持ってきた大きな手荷物を祭壇入り口に降ろす。

ボクはカーラが戦闘するところを見るのはこれが初めてになる。

相手の得物は一般的な兵士が使うような、極めて平均的な長さのロングソード。
決して長い間合いではないが、スっと懐に潜れるほど短い間合いでもない。

カーラは呆れたような、苦々しいようなどっちとも取れない顔をして、会話をしやすい程度に間合いを詰めてくる。

　

カーラは他人事のように言う。

話に飽いたとばかりにカーラは抜刀する。

ボクも宝剣を抜き、十本ほど複製して構える。
多分こいつに充電してある妖気もそろそろ危ない・・・。

カーラの顔が怒りで歪む。
前にリヴァランにのされたときの反応で感じたが、やはり彼女はプライドが高く直情的だ。
どうやらまんまと煽ってやれたぞ。まぁ、この感じだとビンゴなんだろう。
正直のとこボクらは生まれて間もない。当たり前なんだ、妖気に比べて経験値が低いのは。

カーラは妖気量を抑えて正面から斬りかかってきた。よし。

まず第一の関門はクリアした。もっとも恐れていたのはカーラが遊ばず、フルの妖気でボクを瞬殺することだったんだ。
だが、これは多分こうなるだろうと思ってた。ボクが逆の立場でもそうしただろう。
必ず勝てると思ってるからこそ、よく知った相手だからこそ、思いを知らないまま殺したくはない。


ボクは宝剣を九本周囲に投擲して、念動で牽制体制のまま宙に浮かす。


そのまま残った一本で向かってきたカーラを迎え撃つ。
様子を見ながら数合切り結ぶ。このバカ妖気で剣戟は見た目より重いが、やはりまるっきり殺意が籠ってない。
しばらくは遊ぶ腹づもりが見え見えだ。嘗められてるのは悔しいけど、でもこれも期待した望ましい展開といえる。

彼女は激しい剣戟を浴びせてきながら、防戦一方になってるボクに言う。

カーラもバカじゃないな。更に数合切り結ぶ。

・・・お互い未熟な剣技。実をいうとこれまで相手に一撃いれてやれるチャンスはどちらにも何度もあった。
だが、どちらも敢えて入れていない。ボクは、今はこの状態を保つためカーラに無駄なダメージを与えたくない。
カーラは、まだ遊びを続けたいのだろう。

ボクはカーラの剣を思いっきり弾いてやる。

ボクは全力の一撃をカーラにお見舞いする。
当然受け太刀されるが、妖気はともかく体格は互角だ。少しだけよろめくカーラ。

.

しみじみと頷く。

そこまでなのか！と呆れたように笑って。

異性の好きという言葉にしばし落ちつかなげに視線を泳がす。

ヘリヤの顔を正面からじーっと見つめて逆に突っ込み返す。

実際にヘリヤが異性とどんな風に接しているのか分からないので、思ったままを言ってみた。

暫し、赤面したまま唖然としていた。

笑顔を浮かべたまま、ヘリヤの言葉を待つ。

　　　　　　メタセコイアは見守っていた、愚かな地球と君の最期を。