カラバの得物は両手持ちのグレートソード、呪剣ライアー。

何故『嘘つき』の名を冠するのかはボクは知らない。

ユベール領に伝わる公爵様の愛剣、魔剣バアル・ベオルのレプリカらしい。
重量１５０ｋｇにもなる意味わかんない武器だが、カラバはその剛腕と妖気で軽々と振り回す。

対するボクの愛剣はご存じ宝剣セイレネス・アズーロ。
奇しくもこちらはバアル・ベオルの姉妹作、バアル・ゼブルのレプリカだ。
ただし剣としての性質はまったくの逆。こちらは超軽量の投擲目的の剣だ。

戦いの前は必ず名乗りを上げるのが妖魔の流儀だ。

まずは先手必勝、ボクは距離を詰められる前に剣を投擲する。
もちろん投げっぱなしではない。念動制御だ。妖気を封印してるボクの主な武器は念動になる。
あとは、さっきの緑のおチビから供給されるわずかな妖力。

不規則な投剣のカーブがカラバを牽制する。
ふむ、と特に動じることもなくしげしげとこれを眺める。

カラバはまるでハエでも叩くようにボクの剣を打ち払い、一気に距離をつめてくる。
が、ここまでは計算どおり。

ボクはおもむろに両手から一杯のセイレネス・アズーロをずらりと並べてみせる。

宝剣セイレネス・アズーロはオリジナルのバアル・ゼブルにはない特性を一つだけ持ってる。
それは妖力供給による剣の複製だ。
もちろんこれは莫大な妖力を食う上に、コストパフォーマンスも決して良いわけではない。
しかし、一度本体の剣に妖力を充電しておけばいつでも引き出せるという、今のボクにはうってつけの性質だったのだ。
充電するときだけイヤリングを外せばいいんだからね。

全部で十本の宝剣を一気に投げつけてやる。
流石のカラバもこれにはギョッとしたらしく、一旦距離をおいた。

地面にささった複製の剣達は音もなく消えてゆく。

カラバは剣を構えて詠唱を始める。

しまった。

ユベール妖魔の剣術は基本剣先に妖気をこめて戦う。
更に一部の優秀な上級妖魔はその剣先から妖気を放出するという、一種の放射魔法のような芸当が出来るのだ。
ファンタズムという。個人個人の妖気波長によって色がつく。

カラバの剣から一気に放射される群青色の魔力の光。
ボクはたまらず吹っ飛ばされる。


体制を立て直そうと起き上ったときにはもう遅かった。
目の前には憎たらしい猫の顔。

カラバはボクの胸倉を掴んで、顔を思いっきりブン殴った。
お気にいりの服が鼻血でベとべとになる。

これでもボクは体は普通の女の子だ。
それ一撃でもう全身がガクガクに脱力し、持ち上げられたままグッタリになる。

カラバはもう一発ボクの顔をブン殴った。滅茶苦茶に痛い。泣きそうだ。

カラバはまたボクを殴る。唇が切れて血が吹き出す。

また殴られる。

それからカラバはボクに馬乗りになってボコボコに殴りつけてきた。
何度も何度も。そのたびにルイーザの解放を要求する。
もう噴き出す鼻血もなくなるんじゃないかってくらい殴られた。意識も軽く遠のいてきた。
が、ボクは最後まで首を縦には振らなかった。

ボクは精一杯カラバを睨みつけてやる。

ボクも正直なんでこんなに意地になってるのかわからなかった。

根負けしたのか、カラバは掴んでた胸倉を離し、ボクを解放した。

・・・それだけ聴くと、ボクはその場に盛大にぶっ倒れた。

カラバはそう言って、倒れたボクの懐をまさぐってネクターを一つ取りだす。

・・・ネクターは散り、ボクの中にこの憎たらしい猫の力が加えられた。

（暫くお待ちください）

やや小ぶりな乳房を両手で押さえるアイーダ

そう言う間に腰元に付けていた魔道具が展開し、椅子とテーブルを形作る
そして次の瞬間にはテーブルの上にはティーカップが置かれ、宙に浮いたティーポットから紅茶が注がれる