いぶかしむ風な彼の表情にはお構いなしで、彼の手を引く。
ほんの短い距離の間も惜しむよう、あれこれと問いかけて。
だからまったく自然な動きでそのまま火の傍、お玉を渡すことに成功はしたのだが。
彼にとっては自然、ではなかったのだろう。
鈍く響いた骨の鳴る音、けれどまったくとぼけた顔で答えることには。

一応、気遣うそぶりは見せるものの、彼の返事が色よいものであったものだから、
たちまちパッとまた顔が明るくなって。
うふふ、と思わず小さく飛び跳ねる。ぱたぱた、とまた、軽い足音が響いた。

見下ろした先、鍋の中はふつふつと煮えている。
赤ワインをたっぷり使った、ミノタウロス肉の煮込み。

切り分けた肉を鍋に戻しながら、少々心配げに問うた。