おくびょうな猫のこころがそうさせたのでしょうか？


いまだ猫はグリーンパレスをあるいていました。
それもひとりではありません。


ちょうど猫がいたグリーンパレスへのあんないにんをさがしているひとのなかに、猫のしっているなまえがありました。

猫とおいかけっこをしてはげましてくれた、ねずみのひと——スチュおにいさんです。


スチュおにいさんはほんとうはやさしいひとだと猫はしっています。
かおをしかめながらも、くるしむ猫にてをさしのべてくれました。



そのスチュおにいさんがこまっている。
じぶんには、そのてだすけができる。


これもなにかのえんなのでしょうか。
猫にはわかりませんでしたが、スチュおにいさんのちからになれるならば、とすこしだけよていをおくらせることにきめました。



いっしょにいくのはスチュおにいさんだけではありません。
もうひとりのおにいさん。
みためはなんだかちょっぴり猫とにているなって、したしみをおぼえました。
おなじねこのひとなのでしょうか？
でもなんだか猫よりつよそうでカッコいいきがします。

もしじぶんにうえのきょうだいがいたら、こんなふうなひとなのだろうか——？
なんて、ちょっぴりかんがえてみたり。


しまもようをもつこのおにいさんは、おふだのようなものをつかったり、ことだまとよばれるふしぎなちからをつかうようです。



スチュおにいさんとしましまのおにいさん。
いっきにさんかするひとはつよいひとたちばかり。


猫は。
猫のちからはきっとよわいけれど。
からだにやどるあくまのちからだったら——？


とにかくいまは、ふたりのおにいさんをあんないするのがさきです。
猫はせんとうにたってふたりのおにいさんをさきへとあんないしていきます——

まよっているのかなにかをいいたそうにして、やっぱりやめました。つづいてもうひとりのおにいさんにむきなおり、

ねこにしてはちょっとちがうようなきもして、まじまじとみていましたが、はっときづくとふたりにむかってあいさつしました。

お兄さんは、ロク＝リクくんが余裕な顔ですましている様子を見て、
両手をわきわきさせつつ首を傾げました。

お兄さんは、大きな体を丸めて腕を組み、低い声でウゥンとうなりました。
何やら考え込んでいるようです。
暫くそうしてから、「よし」、と、一度深く頷いてから、荷物袋からヤスリのようなものを取り出し、
お兄さんの手の爪の先っぽを一本ずつゴリゴリと削っていきました。
先程まで鋭利だった爪の先っぽは、ヤスリで削ったおかげで、すっかり丸くなっています。
全ての爪を研ぎ終ると、荷物袋にヤスリをしまって、ロク＝リクくんに向き直りました。

　　　　　　ロクを追いかけて走り出す。大変楽しそうだ。

へんじがない、すっかり凍り付いているようだ。
恐怖映像さながらの表情のまま固まったその姿は、出来の悪い前衛彫刻のようでもある。

何故か片言っぽくなりながら、な？　な？　とロクに何らかのポーズを決めて見せている。
おそらく勇者がカッコ良く敵を斬り捨てたところなのだろうが、腰の砕けた盆踊りにも見える……。

何も分かってないアホの子の顔でししょーを見た。
まったく平然としていて縮んだり疲れたりする様子もないが、書類の惨状にも気づかないままのようだ。

ロクに向かってワクワクの未来を語りだしたりした。

愛らしい黒猫の彼の名前を聞いていない事に気付いたのは、
こちらの都合で半端なままで別れてしまった後。
綺麗に整えられた森林道、そこで見かけた見覚えのある姿に、声を漏らして。

小さく駆け足で寄って行っては、様子を伺うように見下ろして。じっと。

びっくりしておにいさんたちのうしろにかくれました。

ちらりとおにいさんたちをみやります。