——夜の出来事——
カッパはきゅっきゅとキュウリ(違います)を磨いていた。
空に掲げ月明かりの元、そのツヤを確認する。
萎びることも色褪せることもない、自慢のキュウリ(違います)だ。

ティムラハの眠りは深い。揺すった程度では起きない。
というのも、怪奇現象が挨拶するような気軽さで起こる家に住んでいたからだ。
ちっとやそっとのことで目が覚めるほど眠りが浅いとまともに睡眠を取れないのだ。
やれ体の上になにかが乗っただの、複数の子供の耳障りな笑い声がするだの、
家鳴りが激しく自己主張するだのした程度では目が覚めない鈍感さを身に着けてしまった。
そんな男だった。

だからきっと、このカッパが何かしたとしても、気付かず寝ていただろう。

カッパがローブの下、裾から潜り込みズボンを脱がそうと格闘している——と。

オーバーオールエプロンの下から、ヨドが顔を出した。
目が合った瞬間、カッパはヨドの頭突きを顎の下から食らって吹っ飛び、背中から地面に落ちる。
随分と大きな音がしたが、手に抱えたキュウリ(違います)には傷の一つも入っていない。
カッパは短い手足をばたばたと動かしたが、上手く起き上がれないようだった。

ごろんごろんと揺り籠のように揺れるカッパに憐れみを覚えたヨドは、
身体を甲羅の下に潜り込ませカッパをひっくり返してやった。

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——朝——

いつもと同じ時間に目を覚ます。
だるそうに深呼吸を一度してから両掌で顔を圧迫してから身体を起こす。
しょぼついた目を擦り、首を左右に何度か曲げ、唸るように数を数える。
ゆっくり10まで数えてようやく、思考が冴えたようで辺りを見回した。

カッパとヨドが睨み合っていた。
ティムラハが起きたと気付きヨドとカッパが睨み合いを止める。

＞プレオネ

＞ゼノ

メモ帳に赤ペンで何か書いた気がします。

先刻の木に向かって大剣を振るいました。
見た目も風切り音も重そうですが、動きはバットのように軽快です。
グワラゴワガキーン。
衝突音の後、地響きをたてて木が倒れていきました。

地面に放り投げました。
思いっきり地面に刺さっています。