青白い光を反射し、刃を翻す。
　俺は、『奴』の命を絶つため、剣を振るった。

「……ククク、その程度では、我は殺せんぞ」
　奴は易々と俺の刃を弾く。
　これが防がれるのは想定済みだ。同時に振るっていたもう一本の刃が、奴の首に襲い掛かる——。
「もちろん、それも想定済みだ」
　しかし、奴は何か障害物があったかのように軽々と、俺の刃をかわした。

「ふむ。今日は話をしにきたのだがな」
「……俺がお前に話すことも、何かを聞くこともない」
　魔王と名乗る男は、ごく自然と会話をしている。俺の攻撃はそこらに飛んでいる蝿と同じということか？
　ふざけんじゃねぇぞ。
「何が気に入らない？　我はお前の父であり、話をしにきただけだというのに」
「お前が俺の親だと言う事も認めんし、もう一度言うが、お前と話す、ことは、何もねぇよ！」

　エンブリオを使わずとも行使できる、火の力。
　それと同質の力を纏い、魔王は俺の攻撃を受け止め、かわし、そして時には防ぎすらせず俺と会話を続けている。
「ふん、良いだろう。今はお前と対話出来ん事は分かった。だが、ひとつだけ——お前の近くにいるあの娘。ミルフィと言ったか？」
「……！？」
「あの娘は、そろそろ覚醒するぞ。我らと対極の力にな——」
「対極の力？　それはなんだ？」
　質問したときには、奴は居なかった。
　さっきまで俺と会話をしようとしていたのに、俺が聞いた途端に逃げやがる。
　……あんな奴が、俺の親、か。

　今はそんな事を言っている場合ではない。
「——ミルフィ」