<Days35>


「そういえば、泳ぎに行くとなると必要なものがあるよね？」
「必要なものですか？何ですか？それは」」

　私の唐突なその言葉にルシエ・ソルブランシェは怪訝な声で聞き返す。

「うん、私もルーシェも持ってないと思うんだよね」
「？？」

　不思議そうな表情を浮かべる彼女に私は少しもったいぶって言った。

「それはね、水着だよ。泳ぐなら必要でしょ？」
「あ……」

　彼女は要約合点がいったのか小さく頷く。
　それを見た私は彼女の背を押すといそいそと押した。

「それじゃ善は急げで、買いにいかないとね。」
「ちょちょっと……今からですか？」
「だから言ったでしょ？善は急げだって」

　私は彼女と若干強引に水着を買いに街へ向かったのだった。


　§§§§§§§§§§§§§§§§


　私は彼女の手を引いて、先日から目をつけていたお店へとまっしぐらに向かっていった。

「ここ、ここのお店、前に少しだけ覗いたけど、可愛い水着がたくさんあったんだよ」

　街角にある小さなブティック、そこへどこか遠慮がちに周囲を伺うルーシュの手をひいて入っていったのだった。

「こ、これを着るんですか？」
「そうそう、あ、こっちも似合うかも？」

　私は彼女に似合いそうな水着をいくつか見ては彼女に手渡していく。

「ルーシェって、可愛いらしいのが似合うと思うんだよね。でもこう意外とスタイリッシュなのも似合う……かも？」
「そ、そんな……」

　明らかにうろたえている彼女の姿を楽しげに見ながら私はめぼしい水着を選び終わる。

「それじゃ試着してみようよ、着てみないと似合ってるかどうかは判らないしさ。まずはスタンダードにこれかな？」

　私は最初に腰にフリルのついたスタンダードなワンピースを指さした。
　それを見てどこかルーシェはほっとしたような吐息を漏らす。

「これなら……そこまで恥ずかしくはない……ですよね」

　そう言って彼女は試着室へと歩を進めた。
　しばらく衣擦れの音が聞こえていたがその音が止まるが、試着室のカーテンは閉じられたままだった。
　しばらく待っていたが、そのまま出てこないので、私は心配になり声をかける。

「ルーシェ、どうしたの？何か問題でもあった？」
「問題は……ないんですけど……」

　私の問いに対する彼女の言葉は歯切れの悪いものであった。

「それじゃ判らないよ、どうしたの？」
「……恥ずかしい……です」

　彼女の小さく帰ってきた返事庭阿つぃは納得いき、どうするか考えたが意を決して小さくシャッターを開けるとその中へと入っていった。

「これなら私以外には見られないし、恥ずかしくないでしょ？」
「う、うん……」

　小さく頷く彼女の姿を上から下までじっくり私は見た。

「やっぱり、そういう可愛いのは似合うね。見立てたとおりだったよ。それじゃ次はこれ行ってみようか？」

　そう行って今度手渡したのはフリルとパレオのついたセパレーツの水着だった

「え？これですか？」
「うん、きっとこういうのも似合うんじゃないかと思ってね、いつもルーシェって控えめな服が多いから、たまには大胆なのもどうかな？って」

　しばらくその水着を手にして悩んで居たが意を決したのか彼女は着替えを始める。
　私は着替えを見ないように狭い更衣室で視線をそらすが、狭い部屋の中ではどうしても身体が当たり、そのたびに彼女のぬくもりを意識することになった。
　しばらくして着替え終わった彼女のことを見るとその表情は赤く染まり恥ずかしがっているのがよく判った。　そしてそのもじもじした仕草を見て似合っていたが、どこか違うなとも思っていた。

「ど、どうですか？」
「似合ってるけど、やっぱりさっきの水着の方がルーシェには似合ってるかも」
「そ、そうですか？」
「うん、そっちの方がイイって言うならそれでも私は一向に大丈夫だと思うけど」
「わ、私も最初の奴の方がいいです」
「それじゃ決まりだね、でももう少し伊野があるから店の中、見て回ろうか？」
「はい、でもそれもしたいけど、もう一つしたことがあります」
「したいこと？何？」
「祀の水着を選ぶことです。私のを祀が選んでくれたんだから、私が選んでも良いですよね？」
「あ、そ、そうだね」

　悪戯っぽく笑みを浮かべる彼女に仕方ないなと思って私は水着選びを彼女に託したのだった。


TobeContinued……

今回の日記もルシエ・ソルブランシェさん(2010)をお借りしました、感謝！！

（えへへ、と苦笑い）