——いつかの話———

言葉や文字がいつ生まれたのか、わらわはとても気になるのじゃ。
わらわには、残念ながら時を超えることはできぬ。

わらわはおそらく、人よりも長い寿命を持っているじゃろう。
そのターコイズの首飾りが砕けるまで、あるいは、砕けたとしても、なお生きているかもしれぬ。
そういう意味では、わらわが長く生きていれば、わらわは未来に飛ぶことができる、と言えるのかもしれぬ。

だが、わらわは過去が知りたいのじゃ。
わらわには過去がない。

わらわが、どうして今のような身体になったのかわからぬ。
だが、そんなことには今更興味はないのじゃ。
何かがあって、こうなったのじゃろう。

わらわはもっと前が知りたいのじゃ。わらわが目にする文字、そして口にする言葉。
これらはいつ生まれたのじゃろう。

「最初の言葉」はなんだったのじゃろう。
「あ」、だろうか、「お」、だろうか。
それとも、わらわやおぬしには発音できぬ言葉じゃろうか。

それらを思うだけで、胸が高鳴ってたまらぬのじゃ。

時を超えることができたら、その、「最初」の瞬間に、わらわはめぐりあいたい。

ビスさん達は大丈夫なんだろうか？

　腕組みをして、深く頷き。

　迷惑を楽しむという行為は、この真面目な青年には難しい行為だろうか。
　しかし先ほどの冗談といい、素質は十分なように思えるのだった。

　舐めてやろうかという想いに駆られたが、我慢した。今は、頬に押し付けた掌をさする程度にする。
　自分の立場的には本気になるわけにも、また、本気にさせるわけにもいかない。
　だが、男をドキドキもさせられないままでいるのは、"女狐"の沽券に関わるのだった。

　興味深げに全身を眺め回すも、彼の自然過ぎる気配故によくわからない。
　ただ長い寿命は、引き換えに悲劇を受け止める回数を多くする。
　手放しで喜ぶわけにもいかなかったが、場を暗くすることもあるまいと笑みを増やした。

　ふい、と顔をそむけて。照れたように夕焼け色の狐は呟いた。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。

# make matrix
> use option: NYPHN code2, GOPHN code3, HYKYH code4, UNSIGNED AOXOLA, DENLI
>
> -- ready --

声と共にヘクスが晴れ、曖昧になっていた姿が顕になる。