ふむふむ、これがおぬしの契約しているエンブリオというわけか。
わらわの首飾りをエンブリオの住処に使いおって。
しかもその前には、契約した精霊の住処にも使っておったそうではないか。

何、わらわが戻っても首飾りの色が戻らない？
おぬしが色々な存在を首飾りの中に封じたせいじゃろう！

それだけ色々入れれば、黒くなるか白くなるかどちらかなのじゃ。
まぁ、本来はわらわのものじゃからな、その首飾りは。
そのうちもとに戻るのではないかや。

戻らなかったら戻らなかったで知らぬのじゃ。
おぬしのようなぼんやりした男には白っぽい色がお似合いなのじゃ—。


それで、おぬし、今何をやっているのじゃ。
一揆？
そんなことはわかっているのじゃ！

いや、訂正する。わかっておらぬのと同じじゃ。
お主にとって『一揆をする』とはなんじゃ？

王を倒す。
ふむふむ。

それはそうじゃろうな。
本当にそれでよいのか？

本当に王を倒してよいのか？

お主はなんじゃ。
冒険者じゃろう。

誰かに言われるままに戦っていては操り人形と変わらぬのじゃ。

見極めるための材料がないのであれば、集めるのじゃ。
お主が聞き逃したものにこそ、お主が見逃したものにおそ、おぬしが知りたいことはあるのじゃ。

今のお主が足りていないと感じるのであれば、そういうことなのじゃ。

この世界の日付をメモした紙を渡す、どうやら秋頃らしい。

　こほん、と咳払いをひとつ。

　此方の世界に来る原因に話が及べば、ふむと吐息して頷きを返し、

　それに、この世界であやつに勝つのは相当難しそうじゃからのう、と腕組みして悩ましげに唸る。

　呵々、と笑って。

　両親の健在を微塵にも疑っていないあたり、そう長い年月ではないのだと思うが。
　一抹の不安を感じて、狐は杞憂を払拭するために問いかける。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。

矢羽から一匹の妖精が薄羽を震わせながらふわり立ち上るように姿を見せる。
彼女がいかにも窮屈でしたといった様子で言葉もなく伸びをすると、ぽんぽんとあたりに光彩の花が散った。