一人でいる。

今回は以前のように迷ったわけでもなく、自主的にPTとは違うルートを選択した。
多少無謀だとも思ったけれど、気になるものは気になる。
そしてこちらの事情に仲間を巻き込むのも本位ではなかった。

──地下牢

何かと気になったこの場所だが、探索してみれば空っぽの牢屋ばかりで、囚人は見当たらなかった。
もしかしたら、アリスがここにいるのではないか。
そういった期待は儚く裏切られたわけだ。

……が、それでも気にかかる。
根拠はない。ただの勘としかいいようがない。
それでも行かないと後悔する、そう思った。
そんな不確かな理由で仲間から離れるのは、明らかに賢くない選択だとは解っていたけど。


地下牢の重たい扉を押し開き、中へと足を踏み入れる。


相変わらず牢獄はがらんとしていたが、前回と違って違和感があった。
人の気配がする。
姿こそまだ確認できていないが、確かに誰かいる。

一つ一つ、牢獄の中を覗いて行くと、奥から3番目の牢獄に、人がいるのがうかがえた。
うつむいていて顔は見えない。

見えないが、その背格好には見覚えがあった。
薄い金の緩く伸ばした髪、自分と同じような黒いスーツ

アリス、とそう声をかけようとした時、ふと背後に人の気配を察し、勢いよく振りかえる。


男が立っていた。


「おやおや、こんなところに客人ですか。先ほどの方といい・・・・・今日は多いですねぇ。」

ゆるりとした口調で、その男……ラズロは自己紹介を続ける。
地下牢には似つかわしくない、司祭の男。
そして神職らしからぬどこか邪な気配。

直感で敵だと身構える。

「噂のあなたたち敵軍を討伐せよとの命を受けておりまして・・・・・」
「・・・・・ここ、通せないんですよね。基本的に。」


通りたいわけじゃない、今は牢の中の知り合いを連れ出したいだけだ。
といっても、そんな要望が新王側の人間に通るわけもないだろう。



なら力づくってやつだ。