あのね、おおきくなったらね、おうじさまとけっこんしておひめさまになるの！


まちって、どんなところ？


わたしげんきになったら、おそとであそんでみたいな……。


……なにか、おてつだいできる？


ねぇねぇ、きょうはちょうしがいいから、おそとにでてみてもいい？


これがねーぱぱでー、こっちがままでー。これがおじいちゃん！
ここでねてるのがわたしー。


あ、あのね、プレゼントっ！


なんのおと？
せいじんしき……ふぅん……。


うん、だいじょうぶ……きょうは、ちょうしいいよ……。


い、いや、たすけてパパ、ママっ、おじいちゃん！
てんじょうがおおきいの、おおきいのっ
ちがうのおおきくなったりちいさくなったりしてるの、たす、たすけて！


ど、どこっどこっ？
みえないよ！なんにもみえないの！
たすけて！たすけて！

小さく繰り返される詫びの言葉に、ただ笑みを浮かべて頭を撫でている。
が、急に弾けた声に驚いて、一度手が止まった。

ふいに変わる真剣な表情にとまどうように、視線がゆれる。
そうして、彼女の言葉を噛み砕くように目を伏せて。

言いかけた唇が、ふと止まった。
何かに気づいたように、ぱちぱち、ぱちぱち、オレンジ色の瞳をせわしなく瞬かせる。