◇ Intermission　→side:B


「どういうことですかー！」

とある宿駅で、一人の少女が何やらお怒りのご様子です。
赫い瞳に長い耳、背中まで伸ばした淡い金色の髪。
どうやら荷馬の貸し出しを渋られているようです。

「いやだからね、今は伝令の騎士団の方が来られているのですよ。
　平時なら別に何も気にすることはないけれど、どうやら今回は領主様からの勅書を承っているようですし……。
　もしか道中でうちの馬といざこざでも起こしたら、我々には責任を取ることができないのです。」


　+ + +


人が行き交う街の中心で、彼女はあれこれ思案を巡らせます。
馬を貸して貰えるまで、ここで数日潰して待つか、あるいは次の宿駅までの街道を歩くか。
このロザリンド近郊をはじめとする南方領域は、未開の森林地帯が多く、街も樹海の中に点在する島のようで、
街道は開かれているとは言っても、魔物や獣による被害は多く、賊が出没することさえあるのです。
そんな中を少女が一人、ましてや徒歩での旅など、襲ってくれと言っているようなものです。
しかし、あまり時間を浪費するわけいもいかないことも事実であり……。
そんなこんなで思考は堂々巡り、打開策もなく彼女はため息をついてしまうのでした。

彼女が歩いている通りの向こうから歓声が聞こえたかと思うと、人々が道の端へと退いていきます。
先頭の馬に跨った二の白騎士に、三の黒騎士、追従する馬車にも数人の弓兵が乗っているようで、
どうやらもしかしなくても、今回の元凶である騎士団の小隊なのでした。
彼女も馬車に撥ねられないように道の端へと避けますが、歓声を上げたり胸に手を当て礼をしている人々とは違って、
その様子を冷めた目で見ているのでした。
先頭で人々に笑顔を振りまく白騎士の青年は、そんな彼女には気付かずに通り過ぎていき、
馬車と共に通りの向こうに消えていくかと思われましたが、馬車の幌の中から一人の騎士が降りてきます。
顔の右半分を覆い隠す亜麻色の髪と、碧色の隻眼の、下級騎士と思わしき鈍色の鎧を着けた少女でした。
御者と二言三言話すと、騎士の少女はこちらへと向かってくるようです。
厄介事は避けようと、彼女はその場から逃げようかと考えますが、どうやらその騎士の少女は知り合いのようです。


　+ + +


場所を移して、二人の少女が話をしていました。

「……それは、すまないことを。」

「別に、あなたの所為じゃないでしょう？」

「私達は明日、夜明けと同時にグリムドールへ向けて発ちます。
　荷馬の規制は昼下がりには解除されるでしょうが、その時間からでは日没までに宿駅にたどり着けません。
　実際に許可が下りるのは、明後日からになるでしょう。」

「……。」

「そこで提案なのですが……、私達と一緒に行くというのは？
　馬の背に揺られるよりは、余程快適かと思います。」

その言葉に、彼女は一瞬目を輝かせますが、すぐにその表情を曇らせます。

「……そんなこと、できるわけないじゃない。
　騎士団の馬車に一般人を乗せるなんて、もしバレたら前みたいな謹慎じゃ済まされないかもよ？」

「当然、馬車に乗る際は鎧を着てもらいます。
　私の物で悪いのですが、詰所に儀礼用の甲冑があったはず。
　……重くて辛いかと思いますが、街を出るまでの辛抱です。
　あの小隊はグリムドールの分遣隊だから、皆あなたの事を知っています。
　……我々は、受けた恩義は忘れないのです。」

「そういうことなら、ご一緒させていただくわ。
　……ありがとう。」

「この程度のことで、あの恩を返せるとは思いませんが。
　でも、どういたしまして。

　……出発までの支度もありますし、荷物をまとめたら、また夜に落ち合いましょう。」

ちょっと恥ずかしかったですけど、と、自分の頬に手を当てて息を吐き。

ですから、ミオさまにとってもそうだったのかも・・・と言いよどんで。
無理に思い出すべきじゃないかもしれないと、口をつぐんで様子を見ることにします。

アムルは一冊の本をとりだします。
表装もない、あまり分厚くはない本で、表紙には『王女と盗賊』とあります。

本は何度も読んだように、だいぶくたびれています。
そろそろとミオさまにその本を貸しました。

そのあと。

感情の話になると、アムルはとても真面目な顔になります。
自分でもまだ正しく理解できているか、自信がないので、自然と慎重に、自分に言い聞かせるように話すのです。

わたしはミオさまのことが、好きですから、とまたちょっと恥ずかしそうに付け加えて。

ものすごく上手く刺さった髪の毛を見てちょっと興奮♪

この短い間でも少なくとも外見上の感情は起伏があまりないことが分かってたのでじーっと顔をよく見てみる。

撫でる方向をミスり尻尾に少し刺さってしまったようで赤い血が少しにじみ、
ミオちゃんの尻尾のとげの2、3本の先端にも付着してしまっている

どうしてそうなった

　　　

　　
　　　　　　

人外の可能性があるとなると、見た目で年齢や身分などを判断するのは浅薄。
丁寧な物腰で、少女は声をかけてみる。