夜の灯りから少し離れた暗がりの中で、その少女は困っていました。
長い袖をめくり、その下を忌々しそうに見遣りますが、本来そこにあるはずの右腕はなく、
奇怪な幾何学模様のレリーフの浮かぶ無数の黒い触手が蠢いているのでした。
彼女が意識を集中するように右腕を掲げると、黒い触手が絡まり合い、失われた腕を形成していきます。
しかし、出来上がった右腕は本来の形とは程遠く、色も元の黒いままの異形の腕でした。
その結果を見て、彼女はやや落胆した様子を見せます。
そして、集中していた意識を解くと、異形の腕はどろりと溶け落ちるように消えてしまうのでした。

「どうして、元に戻らない……？」


+ + +


後日、とある戦いの最中に、黒い服の白い少女がいました。
いつもと変わらずに、大鎌を右手に戦っています。
しかし、その大鎌はよく見れば右手に握られているのではなく、袖から直接生えています。
そして、髪の先や服の裾が、溶けるように、黒く透けて見えるような、そんな気がしました。

クレーの影から突然黄色い女の子がすっと現れ、一言つぶやいたとおもったら、またすっと影に消えていきました

そう言うと、メグが傍らに居た白い兎の両脇を持ち上げます。

兎が抗議の声を上げますが、メグはお構いなく「こうやってやるんだよ」と言うかのように兎を もしゃもしゃ と撫でまわします。

何だかんだで満更でもない兎は、触られるがまま大人しくしています。

そう言って、手招きしています。