「俺は死にたくない。それが答えだ」

白猫の問いに対し、道を開け答える。

「良い判断です。人間は嫌いですが、物分りの良い人間はそこまで嫌いじゃないですよ」

白い尻尾をゆらゆらと揺らし、飴造の前で立ち止まる。

「物分りが良いので、一つ忠告です。見た感じ魔法使いの様ですが、貴方程度の魔力では先ほどのイカにも勝てませんよ。私が見逃しても、他の者に殺されるだけです。死にたくないのなら、早々に立ち去る事をお勧めしますよ」

「あぁ、そうだな。忠告感謝する」

それではと言い残し、林の奥へと白猫が消えるのを見届け、たっぷりと時間を置いてから息を吐く。
見た目は子猫程度の白猫だが、桁外れの魔力を放出する化け物だ。
出来る事なら二度と関わり合いになりたくない。
進む進路は、白猫が向かった方向とは違う方に進もうと決め、放り投げた荷物を拾う。

「…見つけた……ホントに居るなんて・・・」

今にも飛び出しそうな状態で、しかし、茫然とした様子でラゼルが呟く。

「あ、飴造！何してるのよ追うわよ！」

「馬鹿か！お前もさっきのを見ただろう。あの桁外れの力を。あんな化け物に関わってたら、命がいくらあっても足りん」

たった今、二度と関わり合いになりたくないと思い、別の進路をと決めたばかりだ。
ラゼルがなんと言おうと、命は大切である。

「何よ！飴造の意気地なし！根性無し！甲斐性無し！良いわ、私一人で行くから」

言いたい放題言い、白猫が消えた方へとラゼルも消えていった。
別に何か約束があって一緒にいる訳ではないし、一緒に居る理由もない。
ただ付いてくるというだけで、今まで一緒に居たという事の方が可笑しいのだ。
荷物を担ぎ直し、白猫とラゼルが消えた方とは反対の、金髪の少女が消えた小川の先の草原へと足を向ける。
二度と会う事がなかろうが、何処で野垂れ死のうが関係ない。
そう思っているにも関わらず、自然と歩が止まる。

「言いたい放題言われっぱなしは良いが、俺の言い分も聞かずに死なれても寝覚めが悪いか」

あの白猫の言い回しを考えるに、邪魔をしなければ殺される事はない。
問題なのは目的を知らない事だが、問答無用で殺さなかった所を見ると、全てを投げ出して逃げれば殺される事はないだろう。
やれやれだなとため息とともに呟くと、来た道を引き返し、とぼとぼとラゼルの後を追った。

パタパタと走り去っていく壁。
三十分くらいして戻ってきた。

ちょっと溶けかけてるアイスを差し出してきた！