ある日の昼下がり。

食料の買出し兼、自身の食事のため、街へ出かける。

昼の、ましてや人の多い場所に、自分の糧となる陰の気は少ない——

たとえあったところでロクな質ではないことは重々承知ではあったが、

夜は知人の店の手伝いや、同行者たちの目がある以上、

先日の『食い溜め』同様、昼間に出かけるしかなかった。



ひとまず町外れの小川で糧を得た後、

気を取り直し、今夜の夕飯の献立に悩みつつ、商店街を歩く。

ふと空を見上げれば、主と共に初めてこの地を踏んだ時よりも、その蒼は澄み、

行き交う人々の息は白く、歩調も忙しない。

借り物で気に入っているとはいえ、春の色を纏った自分だけが、取り残されてしまったような、孤独感。

ヒトならざる者故、暑さや寒さとは無縁だが、やはり人目は気になる。

戦いに無関係な一般人の娘を演じている今ならば尚更。

もちろん、今までに自分でも女物の服を何着か購入したものの、それもそろそろ季節外れ。

以前渡り歩いた世界から持ち込んだ貨幣にも、知人の店の手伝いで得た給金にも、まだ余裕はある。

まだ日も高い。　献立に悩みながら、ウィンドウショッピングもいいかもしれない。

それがおそらく、年頃の娘の休日の過ごし方、なのだろう。

＞ご主人

なんか考えている……名前決めてなかったか。