俺はこの一揆が終結するまでの間、一人でいる間考え続けた。


両親の事、先生の事、独り立ちした後の事……
過去を振り返ると、こうして自分のこれからを考える事は少なかった気がする。

一度は諦め、命まで絶とうとしていた。
しかし……死にかけ、元居た世界との繋がりが絶たれかけた時、執着だけで師の住む世界へと飛び出て来た。
腹を裂き、死にかけた俺を救ったのは、あの時から百年程時が経過した先生だった。
当時は知る由も無かったが、あの時先生の言い放った『貴方の師匠である鳴瀬葛葉と名乗った人間は死んでいる』は、
その真意を知るまで、俺を疑心暗鬼にする物だった。

しかし、今は違う。
俺は師と正式に再会を果たし、師の友人であるクロードの手掛りも見付けた。
収穫は十分だ、暫くは他世界への調査も減るだろうと踏んで、元の世界へ帰ってからは少しゆっくりする事にしよう。
その旨を先生に話すと、彼女は笑って、

快諾された。
まぁ、それはそれで想定内ではあるので、今更驚きもしないが……

言われてみれば。 自分の住んでいる国の事すらよく知らないでいた。
確かに、次の目標が定まるまではそれでも良いのやも知れん。
頷くと、今度はこの世界で契約したエンブリオ達に向き直り、

一番に飛びついて来たのは、やはりと言うべきかディースだった。
やっぱりお前は来るのか。 苦笑しつつぐりぐり頭を撫でていると、
肩には先生が『にらみつけるさん』と名付けてしまったスザクのラミさんが留まり。
もう片側の肩には、しれっとザントマンのサズールが座っている。
足元にはキラーウルフのルーフ、ユニコーンのユナイト、ホワイトタイガーのイエリオ、オルトロスのフィリアが座り込み…
……って、何だこれは。 此処は動物園か何かか？
まぁ、それはさておき。
気付けばキヨヒメの壬生、デュラハンのヴィルヘルムとアイゼンベルクも来る気でいるようで、さも当たり前であるかのように動物達を撫で回している。

正直、召喚獣や使い魔として契約するにも数が多過ぎると思うのだが。
しかし、契約者と似た性格の者ばかりが集まっているらしく、誰も引く様子は無い。

結局は諦めが肝心である。 観念してそう言うと、此処に留まる物以外はめいめい、部屋の外へと出ていった。
クロードは精神体であるが故に、連れ出せない。
そして夢に干渉する何かが収まった以上、こうして寝ている間だけ別世界に意識を飛ばす事も出来なくなるかも知れないらしい。
先生は、此処に居る間で解析し切れなかったデータを持ち帰るだけだと言っていたが、少し俺からも情報を集めるべきか。

そうしてクロードとの記念品交換(と言う名の情報収集)が終われば、今度は皆との再契約である。
一人一人好きな石を選んで貰い、それを介して使い魔の契約を行う。
一連の作業が終われば、後は帰るだけだ。

クロードが夢から覚めるまで待ち、見送った後、
一揆が終わって安らかな時を取り戻した元キョンシーの榮刀を見送れば、もう此処ですべき事は無くなった。

再契約した皆の輝石を手に、最後に話さねばならぬ者の所へと赴いた。

ハサミを鳴らしている

なぜかハサミを鳴らしている