私は今、枯れた土地の一つの目印の近くで、各地に散らせた『同胞』の集合を待っている。

時刻は昼前といったとこかしら。……あつい。



今ここにいるのは、私、ジャンクエンジェルのアクエリオンと

ガラクタ姉弟の小さい方、クウ・シロザキと……

ガラクタ姉弟のでかい方にして、私の主、アンナ・シロザキ……。



アンナは珍しくおとなしくしている。……正しくは、来たるその時を待ち構えてる。

その隣でクウは……黙って、おとなしくしているだけ。

ふたりともとくに暑がる様子はない、が……なにこの空気、すごい、こう、身が痺れそう。



あたりを見回せば、チラチラと冒険者……一揆の民の姿が見える。

アンナはそれを観察しているし、クウはそれを興味もなさそうに見ている。



と、こっちに寄ってくる一人の……女性の姿が。……女性？

どこかの地下牢で見た、そして私の『同胞』の一人が連れている……キョンシーだった。

お忙しい、ねえ……なんて白々しい、いやほんとうに忙しいのかもしれないけど。

少し溜めて、次の言葉を放つ。

今私、言い切った！って顔してるわね、きっと、清々しいくらいに。

何も映していない死体の目を閉じて、彼女は言う。

ああ、なるほど……前も似たようなことあったものね。たしかあのときは催眠術だったかしら？

まあそれなら、その程度なら……受けてもいいんじゃないかしら？

…すいません、失礼ですね、と死体の少女は頭を下げる。

いやいやいや、それある意味図星だから、お見通されてるから。

……以前のアンナが、ソレなのよね……。



まあでも、あの頃の敗北から学習したことがちゃんと私にもあるから、ね。それは————

そう、あの頃のアンナは不明瞭だった、その腕をなんのために振るうかも、最終的な目的も。

……あら？意外な返答が。

……かなり頭の冴える子なのではない？この子。死体だから腐ってるはずなのに。

あの頃のアンナは、ただ無我夢中で欲求を満たすために武器を振るってただけだものね。

と、ここでキョンシーが……

少し言いにくそうに目を逸らし、続けた。

否定出来ない……。思うように言葉が紡げばくて、詰まらせる。

まさか、そんな痛いとこを突いてくるとは思わなかった。思ったよりも……見通している。

やったのことで紡いだ言葉を絞り出して声にする。

これは事実……いや、そうでないかもしれないけど

私は天使、廃れた天使。付き人を導くのが私の仕事だから……

あっあっやめておいうちかけないで

普通の少女よりも一回り小さな死体の手が、私のガラクタの身体を撫でる。

あっ、くすぐったい……でも、熱こそ感じないけど、どこか暖かみを感じる手ね。

……………………。

少女の手は私を慰めるように、諭すように、私の体を撫でる。

この思いやりは私達には無いもの。

身も心もジャンクへと成り果てている私と、身体は腐らせても心は腐らせない彼女…………

どこで、差がついたのかしらね。

…………えっ



無意識だった、完全に無意識。

咄嗟に、私はそんなことを問いかけていた。

あっあっまってごめんなんか恥ずかしいから…………！！

あっごめんほんとごめんなさいなんかまじめに返されちゃったごめんなさいっ！

小さくくすり、と恐らく年相応であろう笑みを浮かべると、失礼しますと頭を下げて帰っていった。





ああもうなんで私はあんなことを言ったのかしらね！

彼女どころか、他の、ジャンク以外のエンブリオはほとんど面識無いはずなのにね……！

……と、思ってるのだけど……やっぱりどうも心に引っかかりがあるわ。

気のせいではないかもしれない。彼女とはどこかで……いや

そうなったらいろいろ狂うわ、ジャンクの山で過ごしたはずなのに、この謎の記憶があるのは……



あれ？私って、何者？

そして彼女も……何者？








……まあいいわ、ちょうど、あの剣士も来て、そのうちあの少年も来るでしょうし

ひとまずは……一番近い案件の処理、よ。

軽く手を振ると、小さな姿は水面にぽちゃん、と落ちて消えた。

毎回、前衛に呼びだされて爆発してます。

妖精はフリーダム。
俺達がルールだと言わんばかりのアレです。

こうして妖精さんスナック（ジャンクカレー味）の開発がはじまったのでした。

僅か 姿勢を崩した隙に 女は十分に体勢を整え　拳を放った

隙を突いて放たれた　全身の力 と 気迫を乗せた 必殺の拳

受ける事も　避ける事も　容易くはない　　しかし


肋骨に　狙いを定めて　拳を突き出す


その動線


その狙い


狂骨は　一度　見ている

解体、という言葉には少し首をかしげて。

聞き慣れない単語にきょとんとする。

思わずツッコミを入れる。

しるばーどの心配に気付かず、ようせいは嬉しそうに話す。