哀しいほどに美しい星空。取り込んだ力が想起させたのはそんな幻だった。遙かに過ぎ去った日に見た、月星の他に何一つ無い虚空。
　投げ出した身を切った寒風、見るに堪えない肉片と化した屍体が蘇るうちの死に勝るとも劣らぬ苦痛、喪われたもののために叫んだ音無き慟哭までもが思い出されるほどの、はっきりとした記憶。そうだ。あれは確かに、すべての喪われた日だった。無くすモノなど何もないと思ったはずの己に、失うべきだったすべてを教えた。


　それは例えば敬愛したものからの信頼。


　例えばそれまでの生において最も長い時を過ごした、帰るべき場所。


　例えばあの世界における私の生。
　そのすべてが得たモノと釣り合わないことに、それを手にしたからにはすべて捨て去らなければならなかったことに、あの日ようやく私は気付いたのだ。
　そうだ。貴女は。貴女は間違ってなどいない。どうしようもなく進む道を違えたのはただ、私だったのだから。
　夢幻の星はその身を潜めながらも、静かに私の奥底へ息づく。
　嗚呼。
　竜の咆哮が、聞こえる。

その可能性は考えてなかった、とばかりに驚きの表情を浮かべる。

人形のエンブリオの動作を、不可思議そうに眺めやり。
もう一つ思索を深めるかと思った矢先、龍の質問が飛んで来た。