どうながねこぞく、杵嶋 鬼子、秋廻 壱歳 尽儀郎と別れた後、行く当てもなく彷徨った。暫くして緑色の髪をした魔女と遭遇した。同じ緑色の髪の魔女と言っても、ルシウス・キキはシセ・フライハイトとはまた別の不可思議な雰囲気を纏っていた。砂地の強者を討伐するための一時的な同伴者を求めるとのことで、その誘いに乗ることにした。

ルシウス・キキは謎めいている。トキサメとやらと変わらぬ黒尽くめだ。我を害する意図が無いとも断定できぬ。念の為に先程支配したパロロコンに、別れの時まで一刻も目を離す事がないよう設定を施した。どんな寝顔をしているか後で覗き見てやろうではないか。



盾がいないことは不安だ。だが、それ以上に我が身の変化を感じずにはいられない。この世界、メルンテーゼを訪れてからというもの、魔力のみならず肉体そのものを奪いたいという衝動に駆られるようになった。今はまだ同行者の目を盗み、犠牲者の鮮血に口付けするだけで済んでいるが。
この世界に来るまでは自らが傷つけられたことなど無かった。傷を負うという経験が我が身と心を変えたのか。変化は嫌いではないが、大望の前には安定が必要だ。すぐにでも盾を取り戻さなければならない。

（ねこぞくのくびねっこ持ち上げ）

（剣を鞘にゆっくりと納めると、絶叫が静かに現れて消える）