分断された後、俺は敵を片付けた。ミクネらのいる戦場へと戻って来た。

どうやら敵は全滅させたらしいが、誰も彼もが傷だらけ。

これは好機だ。”喰らいの竜”の息の根を止めるならば今しかない。
拳を握り手甲の円を輝かせたその時、異変は起きた。

竜の放つ光が弱まり始める。それは俺からの生命力が供給されていない証。
つまり俺の体は……

今までよりも一層強い苦痛が、俺を襲う。
焼けるような痛みは、体を溶かしてしまいそうで。引き裂くような痛みは、この身を破裂させるかのよう。

変質状態から元に戻す。
変質後の俺の肉体は、どういうワケか人の身に余る量の生命力を生み出し続ける。
そんなモノがどうして俺の体から発せられるのかはわからない。

ただ一つわかっている事。
それは俺の器が限界を向かえたが最後、生命力の迸流が周囲を滅ぼす事のみ。

今まではあの竜に押し付けていたから良かった。だが今は供給を断たれてしまっている。

脱力感と共に倒れそうになる。
だが、ここにはミクネがいる。故に…倒れるワケにはいかない。

鉛のように重く感じられる肉体を走らせ、俺はミクネの手を掴んだ。
俺とヤツ。お互いに満身創痍ではあるが、地力では向こうの方が圧倒的に上だ。
悔しいがここは退くしかない。俺はミクネを連れて、森の奥深くへと走り出す。
意外な事に、ミクネはすんなりと俺に付いて来た。
あのクソドラゴンの暴れっぷりを目の当たりにした所為だろうか。
……いいや、今は安全な場所まで移動する事を優先しよう。



随分長く走った。ここまで来ればもう大丈夫だろう。
……そう思った矢先に、体中から力が抜け落ちる。こんな所で眠るワケにはいかないというのに。
まるで地面に埋められたかのように、体はぴくりとも動かない。

意識が、混濁する。

先の戦いでの消耗が激しかったのだろう。あの場から離れた後、
緊張の糸が切れたように、サイネルさんはぷつんと意識を失ってしまった。

ただ無言で、自身より二回りも体格のある青年を背に抱え——
引き摺りながらだが歩いていく。
手遅れになる前に処置を施さなければ——焦燥と不安、
そして意志が、ミクネの足を動かしている。
紋章は、あの時以来、反応していない。


とにかくどこか、安静に出来るところを探さなければ——


そう思いながら歩いてしばらく経つが、強運とはよく言ったもので、
都合よく自身の視界に、木々の間から小屋が現れた。