くすっと笑って、そう言った。

　切々と紡がれる言葉を、黙って聞いていた。
　——要するに、どうやら彼女はもう死んでいるらしい。
　それが分かって、きゅ、と唇を噛んだ。
　記憶が無いとか、拾われたとか。そう言った、少し違和感を抱いた部分に何となく納得が行った。
　けれど、それだけで済む話でもない。
　彼女が言う「旅に出る」が意味するところは、つまり。
　暫くは、視線を下げたまま何も返せなかった。

　徐に胸に手を当てて、深呼吸を一つ。
　ちゃんと前を向く。彼女を、友達の顔をじっと見た。
　そして、心を決めて、言葉を伝える。

　決して、責めるような声音ではない。
　彼女が死んでいて、いつかは、きっとそう遠くない内に帰らなくてはいけないということが、ただただ悲しかった。

　友達になってくれたこと。
　友達になって嬉しいと思ってくれていること。
　話し辛かったであろうことを話してくれたこと。
　色んな意味を込めて、彼女はありがとう、とだけ言った。
　きっと、伝わるだろうから。